まほろば俳句日記

毎日見たこと聞いたこと感じたことを俳句にします。JーPOP論にチャレンジ。その他評論・エッセー、学習ノート。競馬も。

彼岸寒蟻踏み潰す音がする/新雑句雑感(193)~プロローグ5の終わり

2017-03-23 06:06:51 | 新雑句雑感

彼岸明けVHSビデオ動き出す  派遣求人ピタリと止まる彼岸明け  彼岸明けパンクロッカー過去のこと  彼岸明け今井聖の隠し玉(北大路翼登場)  マウスピース越しの山脈彼岸明け  入り彼岸春呼ばずとも此処にゐる  はじまりの終りは無くて入り彼岸  点滅の自転車遥か彼岸過  戦争の犬とは誰か彼岸来る  初彼岸ジタバタしても始まらぬ  初彼岸中途入社の友とゐて  彼岸寒蟻踏み潰す音がする  槍衾まぼろしと知る彼岸雨  春彼岸証人喚問勝てるかも(3月23日)  彼岸後の東京23区雨降らず  彼岸東風亡父の齢迫り来る  飛騨牛の旗打つ彼岸明けの空  彼岸道「傷だらけの人生」何度目か  


【俳句の此岸】巨大な空虚の中で発せられた真実の言葉/私とは誰か~プレおたく世代の現在(16)

2017-03-23 04:04:57 | エッセー・評論

1970年代は間もなく尽きようとしていた。私が企画したイベントで【パンク・ニューウェイブ】の2バンドが予定の演奏時間を大幅にオーバーしたため、メインの大物アーチストの文字通り出る幕が無くなり、このイベントは頓挫してしまった。彼らは私とはわずか5、6歳の違いしかなかった。しかし、私たち世代が投げ出した70年安保の挫折の総括と継承を見事にやってのけることが出来た。彼らの敵はコマーシャリズム(メジャー文化)への拒否であり、体制そのものへの反逆であった。その当時、政治への参加は完膚無きまでに喪われており、それを投げやりな演奏形態だけでなく、ファッションや言動など・・アンチ風俗の徹底である意味より過激化していた。70年安保当時のカウンターカルチャーの基調は【ラブ&ピース】であり、ドラッグによる【拡張意識】であり、どこまでも内省的であった。一方、まだ10年も経たないうちに内省は消失し、音も歌声もファッションも何もかもが外部に向かっていた。私が、70年代の前半の上京後に出遭った先行する人々は、皆一様に言葉の過激さに反して温和で優しく、親愛に満ちていた。互いの外部(他者)にこそ共通の敵が存在し、その敵と闘うためには互いに【被害者】である必要があったし、仲間意識を強める必要があったからである。ところが、わずか数年遅れてこの世界に割り込んで来た【パンク・ニューウェイブ】の年少の彼らは、己れの内部に敵というものを見ようとせず、ひたすら外部の目に見える他者を敵視した。70年安保の完膚無き敗北後に現れた巨大な《空虚》の中で、判別の付かない《全て》が敵であるかのように、見境無く言葉を発し、音楽をぶつけた。時の彼方にしかない、私たちの【70年安保】や【カウンターカルチャー】に対しても言葉の端々で揶揄し、吐き捨て、私たちが何を言ってもすでに負け犬の遠吠えでしかなかった。『お前のこれからの夢は買い物の計画だけだ』(セックス・ピストルズ)とは時代の真実の言葉だったのだ。・・・《続く》