素浪人旅日記

2009年3月31日に35年の教師生活を終え、無職の身となって歩む毎日の中で、心に浮かぶさまざまなことを綴っていきたい。

久しぶりに辞典を買う

2011年05月20日 | 日記
 近頃は電子辞書なるものが普及し便利になった。しかし、どっしりとした重みがあり持ち運びにも不便な辞典にも味がある。私も何冊か愛用しているものがある。古いのもあるがそれぞれに買った時の意気込みなどの思い出もあり愛着があり捨てがたい。

 1966年8月3日に買った、角川漢和中辞典。小学以来、漢字をコツコツと覚えるのが嫌いだったが、高校に入っての夏にしっかり勉強せねばと一念発起して求めたもの。普通の漢和辞典と大辞典の間を選んだ。

 1969年8月に買ったのが広辞苑第二版。広辞苑初版が両親の机に置いてあるのを見ながら、その分厚さに子どもには手におえないというオーラーみたいなものがあった。よくわからないことを尋ねると「どれ広辞苑を調べてみるか」と言って、分厚いページをめくりながら調べてくれる姿にあこがれみたいなものを抱いていた。1969年5月に14年ぶりに改訂された。名古屋で浪人生活に入っていた時である。名古屋の夏は格別暑い。「夏を制する者は受験を制する」なんて言葉を単純に思い込んでいた時である。下宿代が月8000円の時代に3200円の広辞苑は高価な買い物であったが、あこがれと勢いで買った。3畳一間の小さい部屋の小さい机に置いた時、大人になった気がした。

 1970年4月に買ったのが岩波英和辞典。あえなく挫折はするが、ご多分に漏れず、大学生活のスタートした4月、苦手だった英語をなんとかするぞという決意のもと買ったもの。中学、高校は学研や旺文社のものを使っていたが、形だけでもアカデミックな雰囲気のあるものを選んだ。総革装特製というのにひかれたのと岩波という名前、コンパクトな感じが気に入った。かっこだけつけただけでは長続きしないのは自明の理。

 東京堂出版《類語辞典》。表紙裏に“昭和49年(1974)3月25日、ST氏よりいただく。モン・コパンにおいて”と記されている。STくんとは大学時代、同人誌みたいなものを一緒に出したり、キャンプやハイキング、旅行に行ったりした仲であった。
 まわりの人たちが愛知県での採用が決まっていく中、三重県の採用試験に落ちた私は、G判定をもらっていた大阪府の採用待ちの状態であった。なかなかはっきりせず、ようやく枚方市で採用枠が残っているとわかったのが3月に入ってから。そこから、面接や引越しの準備で名古屋と大阪の間を行ったり来たりで、卒業式にも出席できず、友人たちと話をする機会もないまま名古屋を後にすることになった。それが3月25日である。名古屋駅に友人たちがけつけてくれ、新幹線の出発するまでの30分、近くの喫茶“モン・コパン”で話をした。別れ際、STくんが手渡してくれたのが類語辞典。お互いに言葉にはしなかったがこれを選んだ彼の気持ちは伝わって来た。

 2007年5月に買った明鏡国語辞典。北原保雄さんの編というのが決め手。その頃氏が監修する“問題な日本語”シリーズやその番外編“かなり役立つ日本語ドリル”などにはまった時期があり、その延長線上にこの辞書があった。日本語を考えるうえで北原保雄さんははずせない人だと思う。

 そして、今回買ったのが中村明著“日本語・語感の辞典”。最近、意味だけではなく語感というものも日本語にとってとても重要ではないのかと考え始めたからである。同じ意味でも語感の違いで相手を不愉快にさせる場合もあるのである。そのあたりの奥深さに興味を持っている次第。
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