素浪人旅日記

2009年3月31日に35年の教師生活を終え、無職の身となって歩む毎日の中で、心に浮かぶさまざまなことを綴っていきたい。

初めて、生のオペラを観る

2011年05月29日 | 日記
 《スルッとKANSAI》のプレゼント企画で関西二期会の第74回オペラ公演のチケットが当たったので、尼崎にあるアルカイックホールに出かけた。台風2号の接近であいにくの空模様ではあったが、私はさほど苦にならない。オペラを生で観るのは初めてである。
  以前住んでいた家の隣に、定年退職をした老夫婦がいた。奥さんの口癖は「うちは年金生活なので・・・」旦那様は古武士風の風貌で、落語の林家彦六(先代の正蔵)によく似ていた。勤めていた頃の習慣が続いているのか、日曜日の午前中はきまってオペラのレコードを聴かれていた。

 9時過ぎになると朗々とした歌声が流れてくるのである。オペラになじみのなかった私には、その響きがとても高尚なものに聞こえ、敷居の高さを感じた。ある日、庭で万年青の世話をしているご主人にそのことを話したら、風貌通りの生真面目さで「そんなことはないですよ。色恋沙汰の話が多く、メロドラマです。」と答えてくれた。むずかしい顔からメロドラマという言葉が出たことにインパクトがあった。オペラを観ながら老夫婦のことを思い出した。

 この歌劇「つばめ」も典型的な色恋沙汰の物語。全3幕であらすじは

  第1幕 パリにあるマグダの豪華なサロン
 昼下がり、この家の女主人マグダはパリでも屈指の銀行家ランバルドの愛人である。毎日のように常連が集まって詩人プルニエを中心に機智に富んだ会話を楽しんでいる。詩人プルニエはピアノの前に座って新作の詩「ドレッタの夢」を披露するが完成に至らなかったので、マグダが後を継いで仕上げる。
 
 女心の機微を知るプルニエはマグダの手相を見る。それによれば彼女は再び恋を得るが、その恋はつばめのようにしばらくロマンの里を飛び回ったあげく、彼女が馴れた昔の生活に戻ってくることになろうという。
 そこヘ銀行家ランバルドの旧友の息子ルッジェーロがランバルドに会いに来た。マグダはこの青年に強く心ひかれ、パリに来たのは初めてかと尋ねると、ルッジェーロはパリに対する憧れを熱く語る。
 
 そしてルッジェーロはランバルドからパリの最初の夜を楽しむ場所を教わって書きとめる。
客が帰った後、マグダは詩人プルニエの謎めいた占いについて考えこみ、テーブルの上にルッジェーロが書きとめたクラブの名を見つけて何か思いついたように急いで自分の部屋に入る。

 一方、マグダの小間使いリゼットは、プルニエに誘われてマグダの豪華な衣服を無断借用し、連れ立って出て行く。代わってお針子姿で出て来たマグダは鏡を見て自分の変装に満足し心はずんで出かける。

第2幕 ブリエの舞踏会場
人々が食事や踊りに興じている。ルッジェーロが一人、ぽつんとテーブルについている。言い寄る女たちに口をきこうともせず、あたりを物珍しそうに跳めている。お針子姿でやって来たマグダは、たとえみすぼらしい格好をしていてもその美しさに男たちは黙っていない。彼女はルッジェーロの横に座るが、彼はそれがまさかマグダとは気付かない。意気投合した二人は踊り、踊り疲れて席に戻るが、名前を聞かれてマグダは出まかせにポーレットと答える。マグダは初恋のような甘い感覚にひたり、ルッジェーロの胸に抱かれて唇を重ねる。
 
 一方、詩人プルニエに伴われて来たリゼットはそこに主人マグダを見つけて驚くが、マグダの目くばせでそれと察したプルニエはその場をごまかす。やがて銀行家ランバルの姿を見つけたプルニエは気をきかせてリゼットとルッジェーロをその場から連れ出す。

 思いがけぬ所でマグダを見つけたランバルドは「一緒に帰ろう」と彼女を誘うが、マグダは「私は恋を見つけたからここに残る」と答え、ランバルドは「後悔しないように」と忠告して去る。人気のなくなったホールでマグダとルッジェーロは固く抱きあい出て行く。

第3幕 リヴィエラの海岸にあるマグダとルッジェーロの別荘
 数ヶ月後、二人はここで甘い生活を送っている。ルッジェーロは親元に金の無心をして、本気でマグダと結婚しようと両親に承諾を求める手紙を出したことを語る。マグダは自分の過去を打ち明けるべきかどうか悩む。そこへ詩人プルニエと小間使いリゼットが来る。歌手を志して小間使いをやめたリゼットは夢破れて再びマグダのもとに戻ることを決め、マグダはプルニエから銀行家ランバルドがいつでもパリに戻って来るようにと言っていることも知る。
 
そこへ母親からの結婚承諾の手紙を受け取ったルッジェーロが喜び勇んで駆け込んで来る。

 しかしマグダは自分が汚れた身の女であることを告白し、清らかな乙女を装って彼の花嫁になることは出来ないと涙を浮かべ、自ら見いだした生涯のただ一度の愛を捨ててルッジェーロのもとを去って行く。


 とにかく、甘美な旋律に酔わされてしまった。原語上演・字幕付だから良かったと思う。もし、日本語で歌っていたら酔うことはできなかっただろう。

 終演後、外に出ると風雨がさらに強まっていて、台風の接近を予感したが、帰宅して天気予報を見ると温帯低気圧に変わっていて肩透かしをくらった感じである。
コメント
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