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プロ棋士を目指した者たち・・・「将棋の子」by大崎善生

2018年05月15日 | 小説レビュー
奨励会…。そこは将棋の天才少年たちがプロ棋士を目指して、しのぎを削る“トラの穴”だ。
しかし大多数はわずか一手の差で、青春のすべてをかけた夢が叶わず退会していく。
途方もない挫折の先に待ちかまえている厳しく非情な生活を、優しく温かく見守る感動の一冊。
第23回講談社ノンフィクション賞受賞作。「BOOK」データベースより


大崎善生氏の『聖の青春』や、瀬川晶司氏の『泣き虫しょったんの奇跡』などで目にした棋士の名前が色々と出てきます。

この奨励会の昇段基準(年齢制限)は、満21歳の誕生日までに初段、満26歳の誕生日を含むリーグ終了までに四段になれなかった場合は退会となる。とあります。
『泣き虫しょったんの奇跡』では、四段(プロ)に昇段する為の「三段リーグ」の厳しさについて、詳しく書かれていますが、だいたい参加人数は30人ほど、半年かけて18回の対局を行い、上位2名が晴れて四段に昇段できます。

そもそも、この三段リーグに上ることさえ至難の技なんですよね。日本全国津々浦々の「天才将棋少年」と呼ばれた子どもたちが、年齢制限をはじめとする様々なプレッシャーと戦いながら、一握りの若者だけが夢を実現させてプロになっていきます。

その陰で、過酷な奨励会時代を戦い抜く、(本書の中では海で生まれたシャケの稚魚が川を遡上していく様に例えられています)、昇りきることが出来ず、夢破れて将棋会館を去っていく姿あります。

『将棋世界』の編集長として勤めた著者は、プロになれなかった多くの子どもや青年の姿、そしてその後の人生を伝えなければならないと一念発起し、将棋連盟を退職して「将棋の子」を上梓します。

現在、将棋界の話題を席巻している藤井聡太六段は、2012年9月、小学校4年生の時に奨励会に6級で入会し2016年4月に三段、そして2016年10月に四段で、丸4年でプロ入りです。
さらに凄いのが羽生さんで、1982年12月、小学校6年で6級入会、1984年初段、1985年12月四段と、丸3年でプロですよ。

本書を読むと、羽生善治氏や、藤井聡太六段が、いかに「超・超人級」の傑物であるかということがわかります。

奨励会を退会した青年たちの様々な人生、人間模様が描かれていますが、胸に迫るものがあります。是非、将棋の世界に興味のない方も、一読の価値アリですよ。

★★★3つです。