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凝りすぎて失敗か?『6月31日の同窓会 』by真梨幸子

2019年06月27日 | 小説レビュー
凝りすぎて失敗か?『6月31日の同窓会 』by真梨幸子


~神奈川の伝統ある女子校・蘭聖学園の89期OGが連続して不審な死を遂げる。
同校出身の弁護士・松川凛子は、同窓生の証言から真相を突き止めようとするが―
学園の闇と女たちの愛憎に、ラスト1行まで目が離せない!
女子校育ちの著者が、かさぶたを剥がしながらダーク過ぎる“女の園”を描く、ノンストップ・イヤミス! 「BOOK」データベースより


真梨幸子さんの作品は、周り全員悪人『殺人鬼フジコの衝動』以来、2作目です。

タイトルや表紙からも想像できるとおり、女子高を舞台にした、女子同士の「いや~なミステリー」です。このジャンルでは、湊かなえさんが第一人者といえるでしょうが、この真梨さんもなかなかの「イヤミスの女王?」ぶりです。

女子同士の何ともいえない、表面と内面とのギャップや、心の中で思っている嫉妬心や虚栄心、自己顕示欲などが、まざまざと描かれています。

『名門女子高』や、『お嬢様学校』という呼ばれ方は、決して手放しで褒めている呼称ではないですよね。ある種の憧れを持ちながらも、「自分はこういう学校に通う人とは違うわ」と、思っている人もいるでしょう。

さて、本書の内容ですが、暦上はありえない「6月31日」に開催される「同窓会」の案内状が届き、その案内状を受け取った人には、厳しい「お仕置き」が行われるというミステリーです。

登場人物が10人ぐらいいるのですが、その親族も合わせると、中々の数になり、しかも全員が女性で、年齢も特徴も区別が付きにくい設定になってます。よって、読んでいても頭の中がこんがらがってきて、更に時系列も組み替えてあったりして、より複雑になります。

それぞれの一章ずつは面白く興味を持ちながら読んでいけるのですが、章をまたぐ際に、一瞬頭が混乱して、「これは誰?いつの話や?回想か?」などと、ストーリーに集中できません。

あえて複雑にした作者の意図があるのでしょうが、ここはシンプルに時系列で並べて、視点だけ変えるぐらいで、登場人物も5名程度に抑えれば、もう少し内容の濃い、良い小説になったかも知れません。

最後の仕掛けも「ふぅ~ん、まぁまぁ、そういうことですかね。」と、どんでん返し感や、あっと驚くラストではありませんでした。

真梨さんの熱烈なファンもおられると思うので、あまり言いたくありませんが、好みの差ですかね?

★★☆2.5です。

少女の革命『ジニのパズル』by崔実

2019年06月27日 | 小説レビュー
少女の革命『ジニのパズル』by崔実

~オレゴン州の高校を退学になりかけている女の子・ジニ。
ホームステイ先でステファニーと出会ったことで、ジニは5年前の東京での出来事を告白し始める。
ジニは日本の小学校に通った後、中学から朝鮮学校に通うことになった。学校で一人だけ朝鮮語ができず、なかなか居場所が見つけられない。特に納得がいかないのは、教室で自分たちを見下ろす金親子の肖像画だ。
1998年の夏休み最後の日、テポドンが発射された。翌日、チマ・チョゴリ姿で町を歩いていたジニは、警察を名乗る男たちに取り囲まれ…。
二つの言語の間で必死に生き抜いた少女の革命。21世紀を代表する青春文学の誕生!第59回群像新人文学賞受賞作。「BOOK」データベースより


京都にも、朝鮮学校はありますね。左京区に中学校・高等学校に相当する「京都朝鮮中高級学校」、伏見区小栗栖に幼稚園・小学校に相当する「京都朝鮮初級学校(旧・京都朝鮮第三初級学校)」、そして右京区松尾橋のあたりに「京都朝鮮第二初級学校」があります。

チマ・チョゴリの制服姿であるいている女子高生を見かけたこともありますし、2009年には「在特会」による「京都朝鮮学校公園占用抗議事件」があり、いわゆる「ヘイトスピーチ」という言葉をニュースで目にする機会がありました。

さて、本作ですが、在日韓国人三世の崔実(チェシル)さんが書いておられます。まるで自らが体験してきたかのような、生々しい描写と言葉の応酬があり、差別する側の容赦ない仕打ちと、差別される側の中でも、更なる同属差別があったりして、鋭く胸をえぐられます。

ストーリーとしては、始めの方は、主人公目線で語られている内容が「これは男なのか女なのか?」とわかりません。段々と色々な事実が明らかになってきて、ジニが朝鮮学校内で、まさに『革命』を起こすところまでが、時系列を組み替えて語られております。

アメリカのホームステイ先のホストマザーである絵本作家の『ステファニー』が、ジニを連れて色々なところ、美しい景色を見せながら、徐々にジニの心の氷を溶かしていきます。

心の中にモヤモヤと垂れ込めていた霧のような靄のようなものがスッキリと晴れて、最後は一応のハッピーエンドといえる締めくくり方でした。

日本でありながら日本ではないような、朝鮮学校という教育施設の一部を知る上でも、一度は目を通しておきたい小説です。

★★★3つです。