授業や講演・文章などで「日本人の精神的荒廃」「近代化の徹底とニヒリズム」という話をすると、「それはメディア・マスコミによって作られた印象なのではないか? メディアがセンセーショナルな事件を取り上げすぎているのではないか?」といった反論的な質問がよく出てきます。
確かにそういう面もないことはないと思います。
そこで、一つ大きく参考になるだろう資料として、法務省『犯罪白書』(平成17、18年版を中心に)を検索して調べてみました。
平成18年版の統計を見ると、特に「ここのところ少年犯罪が急増している」というのは、やや事実に反しているようです。
とはいっても、昭和21年からすると明らかに増加しています。
そして、刑法犯の統計(平成17年)を見ると、戦後の傾向としては一貫して増加しているようです。
より正確には、『犯罪白書』のコメントにあるとおりで、平成14年にピークだったのが、幸いにしてここ数年はやや減少傾向にあるとはいえ、「戦後を通じて見れば,なお相当高い水準にある」ということのようです。
刑法犯の認知件数と発生率
刑法犯の認知件数は,平成8年(246万5,503件)以降,毎年戦後最多を更新し,12年に300万件を超え,14年には戦後最多の369万3,928件を記録した。翌15年に減少に転じ,16年は342万7,606件(前年比21万8,647件(6.0%)減)となったが,依然として高水準にある。
『犯罪白書』平成17年版
刑法犯の認知件数は,平成8年以降毎年戦後最多を更新し,14年には戦後最多の369万3,928件を記録したが,15年に減少に転じ,17年は前年より30万2,390件(8.8%)減少となった。認知件数は,戦後を通じて見れば,なお相当高い水準にある。
『犯罪白書』平成18年版
さらに私には、昭和21年の138万7千60件から平成14年の369万3千928件という約2.7倍の増加は、その後平成15年からの減少を勘案しても、「戦後を通じてみれば、なお相当高い水準」などというものではなく、やはり「ただごとではない荒廃」と感じられます。
みなさんは、どう感じられますか? さらにどう判断されますか? さらに言えば、どう対処すればいいとお考えですか?
「いつだって悪い人間はいたのであり、いまさら大騒ぎするほどのことではない」のでしょうか?
かつての日本は安全で安心な国だった*というのは、単なる美しい幻想なのでしょうか?
「すでに打っている対策によって、この減少傾向が続くだろうから、それほど心配しなくてもいい」のでしょうか。
*さらにいえば、問題は犯罪件数だけではないと思います*。
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