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瓦屋根の構造
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瓦屋根は平瓦(ひらがわら)が瓦桟(かわらさん:木製)に針金で固定され、降った雨が屋根にもれていかないように、 下から上へ重ねられていきます。
平瓦の波のへこんだ部分を雨水が流れるような構造になっています。
瓦と瓦は単に重ねてあるだけで、固定は瓦桟に針金で固定しているだけです。
棟瓦(むねがわら)は、瓦を何重にも交互に重ねて、雨水の浸入防止に備えています。
雨漏りのほとんどは、この棟瓦の雨仕舞の不備で起ります。
上部は針金を交差させて固定していますが、針金の取り付け部は、モルタルで押さえつけてある場合が多いようです。
瓦がくずれるメカニズム
中越地区のあちこちで、瓦屋根への影響が出ています。
その状況を調べていくと、共通点のあることに気が付きます。
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1.突き上げ
一回目の突き上げにより、重い物ほど上へと飛ばされます。
平瓦は上部の部分を瓦桟(木製)に針金で固定しているため、下の大部分が空中に飛び上がります。
棟瓦は、瓦桟に針金で結んであれば、固定されますが、モルタルのみで固定されているセメント瓦は セメント部分で縁が切れ、全体が上部に飛ばされます。
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2.余震による横揺れ
度重なる余震により、不安定な部分が崩れていきます。
平瓦同士がこすれ合って、破損します。
棟瓦もモルタル部分で縁が切れ、横ズレしていきます。
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長岡地域では山に沿って直角に揺れた為、山に対して平行の屋根は棟瓦がずれ、
山と直角な屋根は鬼瓦が落ちていたケースが多かったです。
棟瓦にすかしを入れて多重に串瓦を上げて葺いてあるものは、見た目は良かったのですが、崩れやすくなっていました。
一般に瓦屋根は地震に弱いという傾向がありますが、よくみてみると、葺き替え時のセメント瓦が影響を受けていました。
葺き替えたばかりの焼き瓦は、棟瓦が桟にしっかりと固定していた為、ほとんど影響を受けていませんでした。
しっかりとした施工をしていれば、被害は最小限に食い止められます。
〇風の強い地域での「土葺き」は屋根を重くして地震時には脆弱になる。
阪神淡路大震災の時は、屋根瓦の下に土を葺き、全体の重さで台風に耐えるような施工をしていたようです。
また、風の強い海岸沿いでは強風に耐えるように「土葺き」を採用していたようです。軽い鉄板を施工した場合は吹き飛ばされたり、塩害を起こすため、材料としては瓦を選択する必要があります。
耐風性を重視した瓦屋根で、更に土葺きをした場合は屋根の重量が増すため、地震時には不利に働きます。
屋根を支える下階の耐震性を高めておく必要があります。
〇耐震瓦
新潟県産の安田瓦の施工組合は、中越地震の教訓を活かして「耐震瓦施工」に切り替えています。
瓦を針金で固定するのではなく、瓦桟に瓦を直に釘で打ったり、棟串瓦の施工前に鉄の心棒を設置してから棟瓦を積んでいく方法が採用されています。
中越地震以降に施工した物件は、その後「中越沖地震」「東日本大震災」「能登半島地震」を受けていますが目立った被害はありませんでした。
〇瓦は耐久性が高い
地震に弱い印象のある瓦屋根の家ですが、能登半島地震の映像を見えていると屋根自体は損傷していない家が多かったように思えます。
2階建ての瓦屋根の家屋の1階が崩壊した家が多くみられたのは、「新潟県中越沖地震」の店舗型の建物が崩壊したケースに似ています。
1階の耐震性能を高める事で、地震に強い建物を実現できるはずです。
映像には映らなかった被害の少なかった建物を調査する必要もあると思います。
焼き瓦の屋根は一度葺いてしまえば、耐久性はほぼ永久的です。
破損した場合は、その部分を交換するだけで済むので経済的でもあります。
何と言っても日本の景観にマッチして美しい街並みを形成できるのが一番の魅力だと思います。
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耐震瓦施工をしている中越地域の復興型建物
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