北方領土の日の社説 を保存しておきましょう。
といっても、全国紙は産経のみでした。
<主張>北方領土の日 四島返還を国際発信せよ
2月7日は、ロシアのプーチン大統領がウクライナに侵攻して以来、3回目の「北方領土の日」である。
日本固有の領土である北方四島は、昭和20(1945)年夏の終戦直前、日ソ中立条約を一方的に破ったソ連の独裁者スターリンに侵略され、不法占領された。
ウクライナ侵略と同様、許し難い国際的暴挙である。
あれから80年が経(た)った。ウクライナの戦場では四島侵略の再現のようなロシアの非道な攻撃が丸3年近くも続いている。
岸田文雄前政権は、2022年2月の侵攻開始直後、欧米に呼応して対露制裁に踏み切った。ロシアは報復として日本との平和条約交渉を一方的に中断した。だが、プーチン氏には元々、領土返還の考えなど少しもなく、まともな交渉相手とはいえない。
日本外交が反省すべきは、その後の対応だ。ウクライナ侵略を世界が注視し続ける中で、同じロシア(旧ソ連)による非道な侵略が終戦時の日本でも起きていた事実を積極的に国際世論に発信していない。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、「ロシアは北方領土に何の権利もない」と語り、「四島返還」の歴史的な正当性を踏まえて日本と連帯する意向を示してきた。
日本がこの心強いエールに応えていないのはどうしたことか。一昨年の先進7カ国(G7)広島サミットでも全く問題提起しなかった。「四島返還」の国民的悲願が世界で共有されるべき格好の機会を逸し続けているのではないか。
プーチン氏は昨年1月に「北方領土をいずれ必ず訪問する」と語った。同9月の演説では、北方領土占領作戦を記念する博物館の新設を提案した。
ロシアが「対日戦勝80年記念日」とする今年9月3日に訪中し、同じく「抗日戦勝80年」を祝う習近平国家主席と「盛大な祝賀行事」を催す予定だ。プーチン氏はこの前後に北方領土上陸を強行する可能性がある。
石破茂政権は、「反日」で結託する中露への対抗策を講じるべきである。ウクライナ侵略の長期化でロシアの国力の弱体化も伝えられる。日本はその点もにらみつつ、国際世論を味方につけて戦略的に四島を返還させる方策を練り上げなければならない。
続いて北海道新聞です。
<社説>戦後80年 北方領土の日 四島返還粘り強く要求を
今年は旧ソ連が北方四島を占領してから80年だ。日ロ間には未解決の北方領土問題が戦後処理の懸案として残されている。
日ロ関係はロシアのウクライナ侵攻に伴い「戦後最悪」と言われるほど悪化した。ロシアは領土問題の解決を目指す交渉を一方的に拒み、領有を正当化する動きを強めている。
交渉再開に向けては、侵攻に対して日本が科した経済制裁の解除が条件との姿勢を示す。
だがウクライナ侵攻は国際法違反だ。ロシア軍が撤退しなければ、制裁解除はあり得まい。
元島民は高齢化し、返還運動の停滞が懸念される。
しかし、日本政府の対ロ交渉を支えてきたのが国民参加の返還運動である。次世代への継承を確かなものにし、粘り強く続けていくことが欠かせない。
今日は「北方領土の日」だ。1855年2月7日に調印された日露通好条約で、両国が初めて択捉島とウルップ島の間で国境を画定した。歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島の四島は日本固有の領土である。
政府は四島返還を目指す方針にいささかも変わりがないことを国内外に訴えていくべきだ。
■交渉の検証が必要だ
旧ソ連は1945年8月9日に日ソ中立条約を無視して対日参戦した。日本がポツダム宣言を受諾した後も侵攻を続け、9月5日までに四島を占領した。
プーチン政権は四島は第2次世界大戦の結果、正当に自国領になったと主張する。
主な根拠とするのが大戦中の45年2月に米英ソが結んだヤルタ協定だ。ソ連が対日参戦する見返りに南樺太を返還し、千島列島を引き渡すとした。
だが協定は密約であり、領土問題の最終的な処理を決定したものではないというのが日本の立場だ。当時はソ連参戦を促した米政府も、協定は法律的な効果を持たないとしている。
ロシアが四島を不法に占拠しているのは明らかだ。
冷戦崩壊後、ロシアの経済危機や政局混迷で日本が交渉で有利な立場になった時期もある。
橋本龍太郎首相による98年の川奈提案では、四島を日本の領土として国境を画定し返還時期などは別途協議すると踏み込んだものの、結局はロシア側に拒否され交渉は停滞を続けた。
2018年に安倍晋三元首相はプーチン大統領とのシンガポール会談で2島返還方針に転換したが、石破茂首相は「2島とか(2島返還)先行論を確定したことは一度もない」とした。
腰の定まらない外交姿勢では相手に足元を見られる。これまでの交渉過程を検証し、教訓を得ることが求められる。
■力による変更認めぬ
プーチン大統領は外からの脅威をあおるなどして愛国心を鼓舞し、求心力を高めてきた。第2次世界大戦で日本に勝利したとの宣伝を強めているのは、その一環だろう。
9月3日を「軍国主義日本に対する勝利と第2次世界大戦終結の日」に改称し、今夏には日ソの激戦地となった千島列島北端のシュムシュ島(占守島)に軍事・愛国博物館を開設する。
プーチン氏は北方領土に「いつか必ず行く」とも発言した。
日ロ双方の国民感情が悪化するだけだ。ビザなし交流を通じて元島民らとロシア側住民で築いた信頼関係も崩れてしまう。
トランプ米大統領はロシアとウクライナの停戦交渉に意欲を示す。気がかりなのはロシア軍が全面撤退せずに停戦する可能性も取り沙汰されることだ。
軍事力でウクライナの領土を奪う国際法違反を容認すれば、同様にロシアによる四島の不法占拠を認めることにもつながりかねない。
力による現状変更を許してはならない。その原則を国際社会は改めて確認する必要がある。
■運動の継承急がれる
侵攻後、ロシアは日本を非友好国に指定し、ビザなし交流や自由訪問の中止を通告した。北方領土墓参も途絶えている。
石破首相は「墓参は人道的な問題」として、再開に向け領土問題と切り離してロシアと話し合うことに意欲を見せるが、道筋が描けているわけではない。
漁業への影響も深刻だ。北方四島周辺での日本漁船の安全操業に関する政府間協議は、日ロ関係の悪化を受けてロシアが拒否を続けている。
首相は先の施政方針演説で「領土問題を解決し、平和条約を締結するとの方針を堅持」すると述べた。
ロシアとの関係が見通せない今こそ、将来に備えて交渉戦略を練り直す時だ。
元島民は5千人を下回った。終戦直後の住民の3割程度である。平均年齢は89歳に達した。返還運動を次世代にどう引き継いでいくかは喫緊の課題だ。
官民挙げて返還運動の担い手を、これまで以上に後押ししていくべきである。