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5月7日は新聞休刊日

2020-05-07 05:30:31 | 社説を読む
今日は新聞休刊日なので、昨日のコラムの一部を紹介します。

・ 英国の医師ジェンナーが18世紀末、「牛痘」を使った種痘で天然痘を予防した話は有名だ。明治時代、修身の教科書にも採用された。「まづ、わが子に種(う)えて」と書かれていたため、日本では家族を最初の実験台にしたと信じられた。だが、実際は使用人の子どもだった
▲「牛痘」でもなかった。21世紀になってゲノム解析で牛に感染した「馬痘」が由来とわかったそうだ。どちらも最近、知った。初のワクチンを生んだジェンナーの評価が変わるわけではないが、古い知識はたまに更新する必要がある
▲種痘の普及で日本や欧米では天然痘は怖い感染症ではなくなった。しかし、アフリカや南アジアには多くの患者が残されていた。1974年にはインドで20世紀最悪とされる流行が起き、1万5000人以上が死亡した
▲天然痘撲滅に動いたのが世界保健機関(WHO)だ。指揮をとった蟻田功(ありた・いさお)博士は感染者と接触があった人を追跡して種痘を施し、感染を減らした。新型コロナウイルスのクラスター対策と似ている
▲バングラデシュでアジア最後の患者が見つかったのが75年。その後、アフリカからも姿を消し、WHOは80年5月8日に天然痘の世界根絶宣言を出した。冷戦下、対立していた米国とソ連も支援し、蟻田氏は「人類は政治、宗教、人種を超えて共同の敵に当たることができる」と総括した
▲宣言から40年。米国はWHOへの資金拠出を停止中だ。新たな敵に一丸となって対処できるのか。再び人類の知恵が問われている。 

「手段が目的化することを趣味という」――。オーディオ評論家の長岡鉄男さんが残した名言だ。世の中には、音響・映像マニアと呼ばれる人々が一定数生息する。彼らに、「いい音や画質を楽しむのなら、ライブや映画館に行けば?」と問いかけるのはご法度である。
▼好事家にとって芸術とは、アンプやプロジェクターなど好みの機器の組み合わせで成立するものなのだ。情熱が高じると、スピーカーを自作したり、音響のため部屋を改造したりする。家族にとってかなり迷惑な存在だ。でも、最近はネットで配信される音楽や映像を、スマホなどで気軽に楽しむ習慣がすっかり定着した。
▼4月初旬。東京・赤坂のホールで、ピアニストの反田恭平さんと木管楽器奏者によるコンサートがあった。チケットは1000円。と言ってもコロナウイルス禍で会場は無観客。音と映像のライブ配信だ。ジョージ・ガーシュインの名曲が流れた。感染症に苦しむニューヨーク市民への連帯だろうか。素晴らしい夜だった。
▼ライブハウスや劇場が閉鎖され、街角から文化の潤いが消えた。が、この連休中、想田和弘監督の映画「精神0」の有料配信が始まった。こうした取り組みを応援したい。どうせならいい音で楽しみたいものだ。最近はネット配信の作品を高音質で再現するアンプもある。試してみようか。これは正当な手段と目的だろう。

戦争が終わり、お金は新円に生まれ変わった。新しい硬貨をつくる金属も十分でない中、もはや無用の薬きょうなどを材料に誕生したのが五十銭黄銅貨だった
▼小麦粉を巡る古今の話題を集めた日清製粉編『小麦粉博物誌2』によると、真ん中に日本の硬貨としては珍しい小麦の穂がえがかれている。新しい食生活、豊かな食卓が到来するという願いと予感の表れにもみえる
▼麦のまわりを囲むのは、稲、歯車、農工具など。<転がすと、平、和、産、業、とか…音が聞こえてきそうな…デザインである>。同書に図案はそう紹介されている
▼お好み焼き、たこ焼き、パンケーキ…。一緒につくって味わえるからだろう。現代では「粉もの」にどこか家庭だんらんの印象がある。家での時間が増えたコロナ禍のいま、需要が高まっている。残念なことに、高額転売の問題も起きているという
▼マスクと違い禁止されていないのをいいことに、ネットで倍以上の値段がつけられていたそうだ。備蓄や輸入なども十分あるのに一部で品薄になった。転売が不安をあおり、買い占めを誘発している側面がありそうだ。対策はないものか
▼五月七日は、語呂合わせで「コナモンの日」らしい。海外では、コロナ禍を機に穀物の売り惜しみをする輸出国もあると聞く。食の流通は平和産業であってほしい。考えたいことの多い日になりそうである。

※ どれも名文です。
読みやすい、気取っていない。
スーと内容が頭に入る。
文章としては、技巧を凝らした文学の対極にあるかもしれませんが、それも名文なのです。 


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