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伊達判決と桜 -中日春秋より-

2010-04-05 06:43:58 | 社会科関連情報
昨日(2010年4月4日)の中日新聞コラム「中日春秋」は秀作でした。

まずはお読みください。

-----以下引用-------

<米軍の駐留は憲法九条に違反する>
半世紀前、歴史に残る判断が示された。憲法の教科書で必ず紹介される「伊達判決」である

▼東京都北多摩郡砂川町(現立川市)の米軍の飛行場に不法侵入したとして、旧日米安保条約に基づく刑事特別法違反罪で起訴された被告に、東京地裁の故伊達秋雄裁判長は一九五九年三月三十日、無罪を言い渡した

▼墨筆で書いた辞表を懐に判決に臨んだ裁判長の覚悟に慌てたのは、当時のマッカーサー駐日大使だった。判決翌日、藤山愛一郎外相と会談、東京高裁を飛び越えて最高裁への上告を促した。田中耕太郎最高裁長官とも密談している

▼裁判は大使の思惑通りに進んだ。検察は最高裁に跳躍上告。最高裁は地裁に審理を差し戻し後に有罪判決が確定する。露骨な内政干渉の事実が明らかになったのは二年前、米公文書が機密指定を解除されたためだ

▼外務省は元被告の情報公開請求に「記録がない」としてきた姿勢を最近やっと見直した。大使と外相が会談した事実を認め、速記録を元被告に開示したのだ。政権交代の大きな果実だ

▼飛行場は七七年に返還され、昭和記念公園になった。百八十ヘクタールの敷地には三十一種類千五百本の桜があり、ソメイヨシノが満開だったきのうは二万人が訪れた。沖縄の米普天間飛行場の跡地に季節の花が咲き、市民を楽しませてくれる日も必ず来る。

-----引用終わり------

もう少し付け足します。

砂川事件は、1957年、東京調達局がアメリカ軍の立川基地拡張のための測量中に、基地拡張反対派のデモ隊の一部が、立ち入り禁止の境界柵を壊し、基地内に進入したとして、デモ隊のうち7名起訴された事件です。

これに対して、記事にあるように、東京地裁の伊達裁判長が「日本政府がアメリカ軍の駐留を許容したのは、指揮権の有無、出動義務の有無に関わらず、日本国憲法第9条2項前段によって禁止される戦力の保持にあたり、違憲である。したがって、刑事特別法の罰則は日本国憲法第31条に違反する不合理なものである」と判定し、全員無罪の判決を下したのです。

これに対して、記事にある最高裁判所大法廷では、同年12月16日、「憲法第9条は日本が主権国として持つ固有の自衛権を否定しておらず、同条が禁止する戦力とは日本国が指揮・管理できる戦力のことであるから、外国の軍隊は戦力にあたらない。したがって、アメリカ軍の駐留は憲法及び前文の趣旨に反しない。」と差し戻しました。

最高裁判所は違憲立法審査権をもっていますが、その限界、すなわち条約にまで及ぼすのは難しいことを示してしまいました。

この藤山外相とマッカーサー大使の会談についての機密文書を、今月2日に公開したのです。

この後、住民の熱意は国を動かし、立川基地は横田基地に移設されました。


このコラムは、旧立川基地の満開の桜で、普天間基地の問題、日米安保条約と憲法の関係性、情報公開制度など、今の日本が抱える問題を見事に繋いでいます。


高い見識と筆力のある人でないと書くことができないすばらしいコラムです。


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