ベートーヴェン:ウェリントンの勝利(戦争交響曲) 作品91 (スコア付き)
ルードヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン: ウェリントンの勝利またはビトリアの戦い(戦争交響曲) 作品91 (スコア付き) 作曲年代:1813年 指揮:ヘルマン・シェルヘン 管弦楽:ウィーン国立歌劇場管弦楽団
第1部「戦争」
00:00 イギリス軍による太鼓とトランペット 01:17 行進曲「ルール・ブリタニア」(変ホ長調) 02:08 フランス軍による太鼓とトランペット 02:36 行進曲「マールボロ」(ハ長調) 03:12 イギリス軍とフランス軍のトランペットによる掛け合い 04:01 戦い Allegro (ロ長調) 05:39 突撃 Allegro assai
第2部「勝利の交響曲」
08:37 序奏 Allegro ma non troppo (ニ長調) 09:01 Allegro con brio (ニ長調) 10:19 Andante grazioso (変ロ長調) 11:06 Tempo I (ニ長調) 12:22 Tempo di Menuetto moderato (ニ長調) 13:40 Allegro (ニ長調)
《ウェリントンの勝利またはビトリアの戦い 作品91》は、ルードヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンが1813年に作曲した管弦楽曲である。1813年6月21日、ナポレオン戦争の戦いのひとつビクトリアの戦いで、ウェリントン侯爵のアーサー・ウェルズリー率いるイギリス軍がフランス軍を破ったのを受けて、ウェリントン侯を讃える曲として作曲された。戦いの様子を実際の大砲を用いて描写していることから「交響詩」に近い作品であるが、当時交響詩というジャンルがなかったことから「戦争交響曲」とも呼ばれる。 ベートーヴェンは1808年の《交響曲第6番ヘ長調『田園』》でも標題音楽に挑戦しているが、《ウェリントンの勝利》については音楽的な充実度よりも忠実性を重視していると考えられる。そのことは、ラチェット(またはマスケット銃)や大砲という実際の兵器を用いていることや、約3か月という短い作曲期間からも明らかである。したがって、ベートーヴェンが交響曲というジャンルに忠実な描写を取り入れようとしたという解釈は誤りである。 曲は大きく2つの部分に分けられ、前半はビクトリアの戦いを、後半はイギリス軍の勝利を祝う凱旋行進曲である。前半部分はオーケストラを2つに分け、まるでオーケストラどうしが戦うように左右からそれぞれの軍隊の太鼓やラッパ、行進曲が演奏される。戦いの部分は、イギリス軍の大砲が●、フランス軍の大砲が○の記号で表され、次第に○が少なくなっていくことでフランス軍の敗戦を描写している。後半の「勝利の交響曲」部分は、イギリス国歌を変形したものであるが、曲調は変わりやすく脈絡は感じられない。 初演は1813年12月8日に《交響曲第7番イ長調》などと共に行われた。負傷した戦士のための慈善演奏会ということもあり、《交響曲第7番》よりも好評を博した。一方、今日の演奏機会は多いとはいえない。ベートーヴェンという大作曲家が残した作品でありながら評価されないのは、当時としては新しかったものの、音楽的な価値が十分でなかったことが大きい。