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10月15日は新聞休刊日

2019-10-15 05:32:42 | 社説を読む
今日10月15日は新聞休刊日なので、昨日のコラムを一部紹介します。

毎日新聞
・ 「戌(いぬ)の満水(まんすい)」とは戌年の1742(寛保2)年、千曲川(ちくまがわ)流域を襲った台風による大洪水をいう。流域で約2800人の死者を出した水害で、最悪の被害を出した佐久地方では慰霊の墓参の風習が今に残るという

▲松代城の石垣まで水没したこの洪水では、千曲川の立ケ花(たてがはな)(現・長野県中野市)で水位が36尺(約10・9メートル)になった。今日では9・6メートルで氾濫(はんらん)危険水位となる立ケ花観測所の水位だが、きのう未明には何と12・46メートルになったという

▲1983年の台風の際の11・13メートルを大きく超える観測史上最高水位である。決壊したのは、この立ケ花の約6キロ上流の長野市穂保(ほやす)の堤防だった。人々が屋根で救助を求める住宅や水没した新幹線車両基地の空撮に日本中が息をのんだ

▲記録的な降雨を各地にもたらした台風19号では千曲川のほか埼玉県の越辺川、栃木県の秋山川など、東日本の20を超す河川で堤防が決壊した。水が堤防を越えるなどしたのは阿武隈川や多摩川など、実に142河川にのぼったという

▲千曲川の例を見ても気になるのは、記録的な降雨がもはや珍しいものでなくなった現状である。各地のダムの緊急放流も人々を不安にさせた。かつての治水対策が想定しなかった気象の日常化を思い知らされた氾濫の同時発生だった

▲今は行方不明になった人々の救出や、被災して家に住めない住民への支援に全力を尽くす時であろう。そのうえで改めて治水や防災における従来の常識を点検せねばならない「令和元年の満水」以後となる。

日本経済新聞
・ 窓ガラスのテープをはがしつつ、ほっとしていた。金曜日の夜にあわただしく、家じゅうの窓に貼った粘着テープである。よかった、物が飛んでこなくて……。外に出て絶句した。巨大な植木鉢が道路に転がっている。これが窓を直撃しなかったのは、偶然に過ぎない。

▼粘着テープは防災リュックの奥にしまい込んでいた。中身を点検せず、すっかり忘れていたのだ。あったのは偶然に近い。スーパーやコンビニではどこも売り切れ、懐中電灯にも客が殺到していた。そもそもあの金曜日はパンもカップ麺も、あっという間に棚から消えた。あちこちで小さなパニックが起きていたのである。

▼土曜日に雨が強まって、たくさんの人がまた小さなパニックを体験したに違いない。防災無線の割れた声が、警戒レベル3「高齢者などは避難」だという。行けない人はどうする。さらにレベル4「全員避難」の「全員」とは? 浸水や土砂災害の恐れのある地域の人は全員という意味だと、どれほど周知されているのか。

▼窓ガラスにはテープの跡が少し残っただけである。しかし台風19号は、あれだけの備えの裏をかくように各地に無残な爪痕を残した。千曲川などの氾濫、多摩川流域の浸水、老人ホームの孤立。なんとかやり過ごした地域にだって、教訓は山ほど残されたのだ。まずは防災リュックの中身を、とくと調べなければならない。

中日新聞
・ <小鮒(こぶな)釣りしかの川>。唱歌「故郷」の「かの川」とは作詞した高野辰之の故郷、長野県中野市を流れる斑川とされる。千曲支流の一つである

▼同じ高野作詞の「朧月夜(おぼろづきよ)」にも千曲川沿いの光景が描かれる。<菜の花畠に入り日薄れ>。千曲川の河川敷は江戸中期から明治中期にかけて、菜種畑として利用され、美しく輝く菜の花の色から「黄金島」と呼ばれたという

▼台風19号は去った。が、故郷の美しき川をまたたく間に危険な暴れ川へと変えてしまった。千曲川をはじめ、関東、東北を中心に複数の河川が決壊、氾濫し、大規模な浸水被害を引き起こした。台風一過の青空の下、その爪痕を見るのがつらい。なお助けを待つ人もいる

▼浸水した家々。その一つ一つに家族の思い出があり、ぬくもりがあった。被災した方々の喪失感と失望を思えば、言葉もない。国を挙げて、救済、復旧に取り組みたい

▼無情な濁流にある声が聞こえるようである。「あなたたちには失望した」。先の気候行動サミットで温暖化対策に消極的な各国首脳を批判した十六歳の活動家、グレタ・トゥンベリさんの声である

▼巨大台風など異常気象の原因が地球温暖化にあるのなら、故郷の穏やかな川を冷酷な怪物に変えているのはわれわれ人間に他ならぬ。さらなる深刻さと迅速さをもって気候変動問題を考えたい。あの夜の雨と風の音を忘れまい。

※ 3社とも台風による水害。
 同じテーマながら、アプローチの違いが興味深い。
 自分ならどう書くか、考えることが大切なのです。

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