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4月10日は新聞休刊日

2017-04-10 05:45:00 | 社説を読む
今日4月10日は新聞休刊日なので、昨日のコラムを引用して紹介します。

朝日新聞
・  往年の映画「男はつらいよ」シリーズに欠かせないのが、いつも騒がしいタコ社長である。寅さんの実家の裏で町工場を営み、景気の波にいつも苦労している。高度経済成長の続く1970年代初めの作品では、人手不足に悩んでいる

▼「何しろ手がなくて手がなくて」とぼやき、従業員の独立騒ぎに慌てる。新入りになんとか定着ログイン前の続きしてもらおうと、やたらと丁寧に話しかける。「いま暑いですけどね、来年は冷房を入れる予定です」

▼タコ社長がいたら、ぼやいたり、慌てたりしているかもしれない。人手不足が全国的に広がっているようで、2月の失業率は22年2カ月ぶりに3%を下回った。日銀の調査でも、人員が「不足」と答える企業が増えている

▼旅行会社てるみくらぶが破綻(はたん)して内定が宙に浮いた58人も、引く手あまたのようだ。約180社から「採用したい」との問い合わせが厚生労働省に寄せられたと、先日の記事にあった。「明日から出社しても大丈夫」との話もあるというから驚く。不況期に相次いだ内定切りのような悲痛さは見られない

▼かつての就職氷河期。若者を使いつぶす「ブラック企業」の横行。若い人に冷たい経済が、これまではびこりすぎた。仕事を求める人が迎えられ、育てられる世の中でなければ。そこへ進むための好機が、この人手不足であろう

▼保育にお金を出したり、勤務地を配慮したりと、従業員の暮らしを考える動きも少しずつ出ている。ワークもライフも見つめ直したい4月である。


毎日新聞
・ 風船、ブランコ、シャボン玉。どれも春の季語だ。やわらかい陽光を浴び、幼い子供たちが遊ぶ姿は春に似合う。入学ももちろん春の季語である。「入学の子の顔頓(とみ)に大人びし」(高浜虚子)。わが子の成長を実感する季節なのだろう

▲だが、それを喜んでばかりもいられなくなった。子供の登下校中、不審者に声をかけられる心配をする親は多い。千葉県松戸市では小3女児の痛ましい事件が起きた。埼玉県朝霞市で少女が誘拐され、昨年保護された事件では、起訴された男は少女の持ち物の名前を見て声をかけていた

▲校外で名札をつけないよう指導する学校もあるようだ。神戸新聞では昨年、投書欄に寄せられたマンションでの「あいさつ禁止」の話題が反響を呼んだ。小学生の子供を持つ親が、知らない人にあいさつされても返事をしないよう教えているという

▲しばらく前の本紙にこんな記事があった。愛知県岡崎市の町工場で働くママさんらが防犯用の名札を考案した。樹脂の加工技術を応用し、離れると名前が判別しにくくなるようにした。「少しでも不安解消につながれば」と。子供を守りたい切実な思いが伝わる

▲不審者は昔からいた。とはいえ名札を隠したりあいさつを禁じたりすることまではなかった。地域に「知っている人」が減り、「知らない人」が増えたせいかもしれない

▲それでも温かい目で見守る大人たちはいる。毎日俳壇賞に選ばれた昨年の作品が心に残る。「入学の名札の胸が走り出す」(二階堂頴二)


日本経済新聞
・  「もう行かないとな」「思いきって行っちゃいなさい」。昭和のホームドラマには、こんなセリフがよく出てきた。結婚の話である。お嫁に行きなさい、もう行きなさい……。親たちは娘をこうせかしたのだ。適齢期、婚期といった言葉をみんなが口にした時代である。

▼国立社会保障・人口問題研究所の統計を見ると、日本人の初婚年齢は長いあいだ、意外に変わらなかったことがわかる。男は27~28歳、女は23~24歳。これが戦前からの相場だ。戦後はじりじり上昇するが30年前の1987年でも男が28.4歳、女が25.7歳である。結婚は「クリスマス」までが勝負などと世間は囃(はや)した。

▼そういう雰囲気はある時期からガラリと変わり、一生独身という人が珍しくない昨今だ。社人研が先日公表した調査によれば、50歳までに一度も結婚したことがない人の割合を示す「生涯未婚率」は2015年に男で23.37%、女が14.06%と過去最高になったという。背景には非正規雇用の増加などの問題もあるようだ。

▼それにしても、人々のよほどの意識変化なしにこの激変は起きなかっただろう。この国の未来に与える影響は別として、適齢期だ、クリスマスだという結婚圧力社会から、男も女も逃げ出したとすれば感心ではある。そうそう、50歳まで独身なら「生涯未婚」だなんて、昭和ドラマみたいな定義もそろそろやめたらどうか。


産経新聞
・ この季節の空模様は移ろいやすい。「春に三日の晴れなし」という。花日和、花曇り、花冷え。桜にちなんだ天気の言葉が多い。列島の空を寒気と暖気が往来し、泣いた空が笑ってはまた崩れる。季節の事情が風趣に富む言葉を育てたのだろう。

 ▼つい先日、雨雲が切れたのを幸いと、都心を離れて郊外の桜並木を歩いた。つかの間訪れた晴天に、日差しを浴びた花は輪郭が際立ち、花びらでにぎわう枝に切り取られた空の青は深かった。春先に冷え込んだせいか、ようやく綻(ほころ)びようかという花弁の結び目も多い。

 ▼冬を抜けた列島は地上も上空も表情が穏やかになる。季節を少し戻せば〈春雷は空にあそびて地に降りず〉(福田甲子雄)の句がある。春の雷は「虫出しの雷」とも呼ばれ、地上を打つことなく雲の上でゴロゴロと鳴る。命の目覚めを促す雷様の温顔が目に浮かぶ。

 ▼ここ数日、新聞は各地の不気味な雷鳴を伝えてきた。自爆テロ、弾道ミサイルの発射、化学兵器とみられる武器の使用…。殺気立つ世界の動きに触れ過ぎたせいだろう。危うい均衡を保ちながら揺れる花がなおのこと美しく見えた。

 ▼板画家の棟方志功が自叙伝『板極道(ばんごくどう)』に書き留めている。「けものを狩るには、弓とか鉄砲とかを使うけれども、花だと、心で花を狩る」。一瞬の美を目でとらえ、記憶という画鋲(がびょう)で心の中に留めておく。殺伐とした時代に忘れたくない心の持ちようである。春の点景もより味わい深いものになろう。

 ▼予報によると空模様はおおむね、11日ごろまで芳しくないという。よどみのあくたとなった花びらにも風情はあるが、すべてを散らすことなく、ほどよく降れと空に願っておこう。わが国には、「落花の雪」という詩情豊かな言葉もある。


中日新聞
・ 電車の中で赤ちゃんの泣き声が聞こえてきたとする。声の方向に自然と顔が向く。なんとなく気になる。そんな経験はお持ちではないか

▼泣き声を無視できないのは脳の動きと関係がある。英国の大学がこんな実験をした。育児経験のない成人に乳児の泣き声、大人の泣き声、犬の苦しむ声などを聞かせ、脳の動きを調べた結果、乳児の泣き声にだけ、感情を司(つかさど)る部分が極めて強い反応を示したそうだ。反応時間は〇・一秒。幼き者の苦しみに人間は瞬時に反応するようだ

▼「赤ちゃんまでが犠牲になった」。シリアの空軍基地を攻撃した米国のトランプ大統領の声明である。アサド政権が化学兵器を使用したと断定し、その対抗措置と説明するが、ほかに手だてはなかったか

▼化学兵器によって病院で苦しむ子どもの映像を見た人もいるだろう。あの実験ではないが、泣き声は聞こえずとも、誰も心穏やかではいられまい。許せぬ残虐行為である

▼されど、化学兵器使用の証拠も示さず、国際合意もない中での攻撃はあまりに短慮であり、一層の混乱を招かぬか。それを恐れる

▼アサド政権によれば今回の米軍の攻撃で子どもが犠牲になっている。また、子どもの苦しみである。その泣き声に反応し怒りは広がり続ける。それが武力攻撃に最後まで慎重であるべき理由であろう。「力による平和」。トランプ大統領の「平和」を疑う。

※ 人手不足、誘拐、未婚、世界情勢、シリア爆撃。それぞれ、世評を独特の言い回しで語っています。

 特に中日は、コラムには珍しく、かなり踏み込んだ書き方です。

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