とっつきづらい哲学や心理学の内容を、出来るだけわかりやすく完結に お伝えすることを目的としたチャンネルです。
ソクラテスの弁明(文庫版) https://amzn.to/2Tnfv7B 【関連した過去動画】 西洋哲学史 古代ギリシャ哲学解説【ソクラテス】前編 https://youtu.be/s9_qTvbURZI 西洋哲学史 古代ギリシャ哲学解説【ソクラテス】後編 https://youtu.be/TQ_uSG-aUm8 西洋哲学史 古代ギリシャ哲学解説【プラトン】① 〜イデア論・善のイデア〜 https://youtu.be/cbAuGHu64ao 西洋哲学史 古代ギリシャ哲学解説【プラトン】② 〜洞窟の比喩・魂の三分説〜 https://youtu.be/380PhfEu70Q 西洋哲学史 古代ギリシャ哲学解説【プラトン】③ 〜国家における魂の三分説・哲人政治〜 とっつきづらい哲学や心理学の内容を、出来るだけわかりやすく完結に お伝えすることを目的としたチャンネルです。 チャンネル登録、高評価、拡散、ぜひぜひ宜しくお願いいたします。 Twitter https://twitter.com/tetsugaku_ch 動画のテキスト版です ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ・ソクラテスの弁明とは 【ソクラテスの弁明】はソクラテスの弟子であったプラトンが残した対話篇です。 プラトンは、ソクラテスが裁判にかけられて、死刑執行されるまでの物語を 4つの作品にまとめています。 それが【エウテュプロン】【ソクラテスの弁明】【クリトン】【パイドン】です。 その中でも、ソクラテスが裁判で語る内容が収録されているのが 【ソクラテスの弁明】です。 有名な【無知の知】をはじめ、ソクラテスの徳に対する考え方、 そして、裁判での弁明の中でソクラテスの代名詞である問答法が 随所に散りばめられていて、 まさにソクラテスを知るために一番有効な作品なのです。 しかも、それらの内容が文庫版でたった50ページほどにまとめられています。 内容もさることながら、その読みやすさと短さも相まって 哲学入門書の定番として君臨しています。 ・ソクラテスの罪状 ソクラテスは、 『アテナイの国家が信じる神々とは異なる神々を信じ、 若者を堕落させた罪』 によって、告発されました。 当時のアテナイは大きな戦争が終わったばかりで、 国民が政治に対して不満を抱えている時代でした。 そして、その不満のきっかけになる政治家を指導したのが ソクラテスだと思われていたので国民感情も ソクラテスを罪人にしたい方に揺れていました。 まずソクラテスはこのことについての弁明を始めます。 そもそも、今回の裁判で焦点になっている様々な事柄は全部嘘だと。 自分は異なる神々について布教したこともないし、 ましてや若者を堕落させたつもりも全くない。 ではなんで、このような裁判が行われているのか。 それは一言で言うと『逆恨み』であると言ったのです。 ソクラテスが有名になる前の話です。 ソクラテスはデルポイで 『ソクラテス以上の賢者はいない』 と言う神託を受けたのち、 自分以上の賢者がいるはずだと信じ、 様々な賢者に会いにいきました。 そこで多くの議論を交わすのですが、 ソクラテスはあることに気づきます。 善や美のようなものの本質については誰も知っていないが、 世の中で賢者と呼ばれる人間はそれについて何も知らないのに 何かを知っていると信じており、 一方自分は、何も知りはしないが、知っているとも思っていない。 この点において明らかに自分の方が賢明と言えるのではないか。 こう考えたソクラテスは、その論法を使って、 世の中で賢者と称される人間をバタバタと論破していきます。 平たく言うと、質問責めです。 「私何も知らないんですけど、それってどう言う意味ですか?」 このように質問を続けるといずれ相手は答えに詰まります。 すると「やっぱりこいつも知ったかか。賢者とは呼べないな」 と処理をされてしまうのです。 これにより、若者たちはソクラテスの論破劇に熱狂し、 一方で論破された著名人たちはソクラテスに恨みを持つようになりました。 そして、その積み重なった恨みが、 ソクラテスの告発につながったのであって、 罪状は後付けの嘘でしかないとソクラテスは弁明します。 ・メレトスとの会話 ソクラテスの自分語りが終わると、舞台は一転、 告発者である詩人のメレトスとの会話に移ります。 そこでもソクラテスはメレトスをこれでもかと論破していきます。 例えば、ソクラテスはメレトスに、人々を良い方向に導くのは何かを問いました。 メレトスは例えばここにいる裁判官や国会議員だと答えます。 ソクラテスはその裁判官や国会議員の全ての人間は人々を 良い方向に導けるのかと聞きます。 メレトスはもちろんそうだと答えます。 ここについてソクラテスは、おかしいと反論します。 その理論が通るならば、人々に指導する立場の人間は そのほとんどが人々を良い方向に導けることになってしまう。 仮に自分が人々を悪い方向に導いていたとしても、 それだけ指導者がいるのであれば結果として 人々が悪い方向に導かれることはないのではないか? 人間一人にそんな力があるとは思えない。 罪状が正しいのだとしたら実際に若者が堕落したわけで、 そのような要因があったのだと言うことになる。 もしかしてこれって逆なんじゃないのメレトス君。 多くの人間が若者を堕落させる指導をしているんじゃないの? その対比として私が浮いて見えるなら私はむしろ 数少ない若者を良い方向に導く存在なんじゃないの? と煽りに煽り倒します。 そして散々メレトスをやり込めた後に、 追い討ちの無罪の証拠を挙げます。 『私は貧乏だ』と。 ソクラテスは他のソフィストとは違い、 誰かに何かを指導しても金銭をもらっていませんでした。 ただひたすら対話を繰り返していただけなのです。 だからお金がない。質素な暮らしをしていました。 仮に悪意でもって若者をたぶらかしていて その目的が金銭でないのならなんなのか? このようにしてソクラテスは自身の正当性をきれいに主張していきます。 ・判決 しかし結果としては、ソクラテスの死刑が確定します。 その結果についてソクラテスはこう言いました。 この結果については予想していた。 むしろ、もっと大差になると思ってたよ。 でもね、私は人々をより良い方向に導こうとしてきただけだから、 本来は与えられるべきは刑ではなく、報酬である。 不正を行なっていない私に対して刑を執行するのは それ自体が不正である。 私の死刑に票を投じたみなさんはたった今とんでもない不正を犯しました。 私の死後、私が受けた刑以上の苦しみと後悔が訪れることになる。 後世の人々に愚かな人間だと判断されることになる。 個人的には恨みも何もないですけどね。 良いでしょう。死にましょう。 もとより死は怖くありません。 そもそも、死については何も知らないけど、 大体2つのうちいずれかだと思っている。 1つは無になることであり、それは熟睡することと変わらないのだろうし もう1つは霊魂としてあの世に行くことであり、 それならばあの世で過去の偉人と好きなだけ議論ができるわけで。 私は私の信念を貫くために死にましょう。 死ぬ私と生きながらえるあなた方、 どちらが幸福な運命なのかは神しか知りません。 このようにして作品が締め括られます。 かなりざっくりとした超訳ではありますが、 なんとなく流れがご理解いただけましたら幸いです。 その後の【クリトン】では、牢屋からの脱出を勧めてきた 友人に対して意地でも脱出しようとしないソクラテスが描かれています。 作品を通して感じ取れるのはソクラテスの信念の強さです。 自分がやってきたことに誇りを持っていて、 それを貫くためなら死をも厭わない。 そのような姿勢こそがソクラテスの弁明が残された要因ですし、 プラトンをはじめ、様々な哲学者に哲学の炎を灯し続けた魅力ですね。 ときには屁理屈おじさんとして描かれるソクラテスですが、 むしろ馬鹿正直で、不器用な人だったことも見て取れます。 今回は作品内の一部のエピソードしか紹介していませんので、 ご興味がありましたらぜひ本を購入して、 何度も何度も味わってみてください。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー