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4月11日は新聞休刊日

2016-04-11 05:27:43 | 社説を読む
今日は新聞休刊日なので、昨日のコラムを見てみましょう。

まずはお読みください。

朝日新聞
・江戸の錦絵に描かれた大名行列は、きちんとした礼装で、その歩みは堂々としている。しかし、裏には涙ぐましい経費節減の努力があったらしい。歴史家の安藤優一郎さんの著書『大名行列の秘密』で学んだ

▼行列の人数をできるだけ減らそうと、家臣1人で2~3人分の仕事をさせる。あえて夜道を歩いて宿泊数を減らす。その宿ログイン前の続きも安くしようと、旅籠(はたご)賃の引き下げを交渉する。石高(こくだか)の割に払いが悪い大名には、皮肉の唄もできた

▼仰々しい一行を大名行列に例えて呼ぶのは、江戸時代から見られるという。舛添要一東京都知事の海外視察も、どこかそんな例えを思い起こさせる。どれほど節約に努めたかは知らぬ。金額だけ見ると、なかなかの金払いの良さである

▼昨年秋に1週間、パリやロンドンを訪れた一行は20人にのぼり、出張費は計5041万円。知事は往復266万円のファーストクラスを使い、1泊19万8千円するホテルのスイートルームにも滞在した

▼都の言う通り、現地で客を迎える時にはそれなりの部屋がいるだろう。治安対策も大切だ。お金が生きるなら使っていい。しかし、判断に甘さはなかったか

▼経済学者のフリードマンは著書で、「他人のお金を自分のために使う」場合の問題点を指摘している。安くあげようという気持ちは薄れ、多くの価値を手にしたい気持ちは強まると。学者に言われるまでもない実感だ。「もしも自分の財布から出すならどうか」。都庁の方々に、ぜひお願いしたい自問である。


毎日新聞
・禅には「本来無一物(ほんらいむいちもつ)」という言葉がある。事物は全て空(くう)であるから執着すべきものはない。茶道の精神にも通じる。茶道家の山崎仙狭(せんきょう)さんはトラック4台分の持ち物を処分し、広い一軒家から2LDKのマンションへ転居した。月刊誌「日経おとなのOFF」に紹介されていた

▲転機は東日本大震災だ。人の営みが一瞬にして奪われた。「本来無一物」の意味を痛感したという。「余計なものが周りにないほうが時を大切に過ごせる」

▲必要最低限のものしか持たない人が増えているらしい。「ミニマリスト」と呼ばれる。昨年の新語・流行語大賞の候補にもなった。とりわけ若い世代に多い。右肩下がりの経済しか知らずに育ったからか。「車? 家? 欲しくない」という声をよく聞く

▲経済成長を重視する立場から見れば社会の停滞だろう。だが見方を変えれば成熟に向かっている気もする。企業の景況感は悪化し、アベノミクスに陰りが見える。消費拡大が社会を豊かにするという発想は行き詰まってはいないか

▲ネット上でミニマリストのさきがけと言われているのは随筆「方丈記(ほうじょうき)」を書いた平安・鎌倉期の文人、鴨長明(かものちょうめい)だ。大地震や凶作を経験し、庵(いおり)を結ぶ。広さはかつて住んだ屋敷の100分の1ほど。四方が1丈、約3メートルの部屋なので方丈と名付けた。世の無常を主題にした作品は今も人の心を引きつける

▲「世界で一番貧しい大統領」と呼ばれ、現在来日中のムヒカ・ウルグアイ前大統領も公邸に住まず質素に生活した。国内外で共感が広がる。幸福は経済指標だけでは測れない。時代や国境を超えた「方丈」の暮らしは教えてくれる。


日本経済新聞
・ 広島市の原爆ドームから道1本隔てた寺に「被爆地蔵尊」がひっそりたたずんでいる。真上から4000度もの熱線を浴びたため、石の台座のうち地蔵の濃い影が残る部分は滑らかなままなのだが、周囲は高温で焼けザラザラだ。核兵器の威力の一端が肌で感じ取れる。

▼米国の世論調査では「戦争終結を早めた」などの理由で、原爆投下を「正しかった」とする人がまだ過半数を占めるという。軍略の視点に重きを置けば、そんな結論にもなるのか。しかし、決して忘れてはならないことがある。あの日、熱と爆風で壊滅した朝の街では、直前まで市民がつつましやかに生を営んでいたのだ。

▼地蔵尊が鎮座する場所は、かつて細工町といい、病院、食品問屋、理髪店などがあった。平和記念公園の一帯も中島本町、材木町などと呼ばれ、映画館や銀行、民家が軒を連ねていた。それが一瞬で酸鼻のちまたと化したのである。原民喜は小説「夏の花」で、「パット剥ギトッテシマッタ アトノセカイ」と書いている。

▼あす、G7外相が平和記念公園や資料館を訪れる。核を持つ米英仏外相の公園訪問は初という。どうか、資料館では焼けた衣服などと向き合い、銀行の石段に残る影に瞳を凝らしてもらいたい。生を暗転させる無慈悲さを改めて胸に刻み、「核なき世界」へ少しでも近づいてほしい。戦後71年、歩みの遅さに気が遠くなる。

 
産経新聞
・暮らしになじんだ和製英語に「マイカー」がある。言葉の起こりは昭和37年ごろで、結構古い。三島由紀夫が教習所でハンドルを握ったのも、その頃という。コースから外れた前輪をうらめしげに見る渋面が、以前の小紙に載っていた。ペンを走らせるのとは勝手が違ったらしい。

▼音楽プロデューサーの松任谷正隆さんは、18歳で初めて車を手に入れた喜びを小紙に語っている。「あの感動は二度と味わえない。スペースシャトルを買えたとしても」。自動車評論家としても名高い人に、そう言わしめたのは40年代半ばに買ったカローラである。

▼59万8千円だった。国家公務員の初任給が約2万6千円という時代には、一つのステータスだったろう。バブル期には愛車の遍歴を競う若者も多かった。マイカーに個性を重ね合わせた時代を思えば隔世の感、寂しさすら覚える統計を日本自動車工業会が公表した。

▼車を持たない10~20代の社会人のうち6割に購入の意思がなく、「関心なし」との回答も7割にのぼった。転ぶ先の見えぬ経済情勢を思えば、ガソリン代や維持費などとかく物入りのマイカーは、現実的でないのだろう。「貯蓄に回す」との堅実路線も多いと聞く。

▼♪片手で持つハンドル/片手で肩を抱いて(『中央フリーウェイ』)。松任谷さんの妻、由実さんの歌にある。この後、「愛してる」と恋人に告げた声は風にかき消された。「あの感動」を知らぬ世代にとっては遠いメロディーかもしれない。名曲も所在なかろう。

▼ある女性国会議員の政党支部では、平成24年のガソリン代が400万円を超えたという。車が必需品の恵まれた世界では、地球を何周もできるカネと時間があるらしい。世の実相とかけ離れた、間抜けな話もある。

   
中日新聞
・ ルーレット賭博の虜(とりこ)となったある男はついには結婚指輪までも質に入れてしまった。こんな手紙を妻に書いている

▼<僕を許しておくれ。卑劣漢呼ばわりしないでおくれ。君が送ってくれたお金は、全部すってしまった>。『罪と罰』などのドストエフスキーである。<僕はすっかりすってしまった、すっかり、すっかり>。文豪も一時期ギャンブル依存に苦しんでいたようだ

▼妻のアンナは一切、責めなかった。それどころか、『白痴』の執筆に行き詰まった夫にルーレットを勧めている。どういう効果か、ドストエフスキーはその後、ルーレットと縁を切った

▼バドミントンの有望選手が違法カジノに出入りしていた問題である。悲しい過ちによってリオ五輪出場という輝かしい扉が目の前で閉じた。身から出たサビとはいえ、その扉がガシャンと閉まる音を聞かされる国民の方もつらい

▼プロ野球選手による賭博行為が問題になったばかりだが、スポーツという勝負や緊張の世界に生きる競技者はギャンブルに向かいやすいのか

▼アンナにならい、優しいアドバイスをアスリートたちにしたい。ギャンブルをおやりなさい。おやりなさいだが、賭けるのは自分の得意な競技のみ。そして賭けるものは、お金ではなく自分の能力、人生すべて。勝てば、こんなに興奮することはあるまい。その上、栄光と拍手まで手に入るのである。

※ いかがでしょうか。

短い文の中に、「主旨」を盛り込み、ウィット、時には皮肉を効かせるのは、文才に長けていないとできないことです。

産経は、文末の「女性国会議員の政党支部では、平成24年のガソリン代が400万円を超えた」ことを皮肉るために、それまでの文章があります。

一方中日は、「バドミントンの有望選手が違法カジノに出入りしていた問題」を中心に置き、その導入としてドストエフスキーをもってきました。
同じく、朝日も「出張費は計5041万円」を中心に置き、その導入に大名行列を持ってきました。

日経は、「G7外相が平和記念公園や資料館を訪れる」意味を、直接的に展開しています。

毎日は「幸福は経済指標だけでは測れない。時代や国境を超えた「方丈」の暮らしは教えてくれる。」という著者の主張を、実例を列挙しています。

それぞれ、展開の妙があります。

文章の組み立て方を味わってみましょう。

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