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ベアテ・シロタ・ゴードン

2013-01-03 07:17:16 | 社会科関連情報
憲法24条 1 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
2 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。


 この条文や、25条、27条の成立に深く関与した、ベアテ・シロタ・ゴードンが12月30日に亡くなりました。89歳でした。

 今朝の中日新聞のコラムに次のように紹介されていました。
 一部、引用して紹介します。

父親が反対したら、好きな人とも結婚できない。自分から夫に離婚を申し出ることもできない。貧しい農家では、家族のために少女が身を売っている…。世界的なピアニストを父に持ち、五歳から十五歳まで戦前の日本で暮らしていた米国人の女性は、家制度に縛られた日本女性の苦しい立場をよく理解していた

▼連合国軍総司令部(GHQ)民政局に設置された憲法草案制定会議の一員として、日本の新憲法の起草にかかわり、草案の翻訳にも通訳として加わったベアテ・シロタ・ゴードンさんである

▼当時二十二歳。唯一の女性スタッフだったゴードンさんが任されたのは、男女平等や社会福祉に関する条項の起草だった。男女の平等は「日本の文化に合わない」と主張する日本側と激論の末、個人の尊厳と両性の平等を定めた二四条として結実したことはよく知られている
 以下略

冒頭に紹介した、現24条の原文を、ベアテは次のように考えました。

第18条 家庭は、人類社会の基礎であり、その伝統はよきにつけ悪しきにつけ、国全体に浸透する。それ故、婚姻と家庭とは法の保護を受ける。婚姻と家庭とは、両性が法律的にも社会的にも平等であることは当然である。このような考えに基礎をおき、親の強制ではなく相互の合意にもとづき、かつ男性の支配ではなく両性の協力にもとづくべきことをここに定める。これらの原理に反する法律は廃止され、それにかわって配偶者の選択、財産権、相続、住居の選択、離婚並びに婚姻及び家庭に関するその他の事項を、個人の尊厳と両性の本質的平等の見地に立って定める法律が制定されるべきである。 Wikipedia より引用

日本で暮らし、彼女自身が日本で見た不合理に対する思いを、この条文に込めています。
当時の世界では、画期的なことでした。

この他、Wikipedia には、彼女の草案の一部が紹介されています。

第19条 妊婦と幼児を持つ母親は国から保護される。必要な場合は、既婚未婚を問わず、国から援助を受けられる。非嫡出子は法的に差別を受けず、法的に認められた嫡出子同様に身体的、知的、社会的に成長することにおいて権利を持つ。

第20条 養子にする場合には、その夫と妻の合意なしで家族にすることはできない。養子になった子どもによって、家族の他の者たちが不利な立場になるような特別扱いをしてはならない。長子の権利は廃止する。

第21条 すべての子供は、生まれた環境にかかわらず均等にチャンスが与えられる。そのために、無料で万人共通の義務教育を、八年制の公立小学校を通じて与えられる。中級、それ以上の教育は、資格に合格した生徒は無料で受けることができる。学用品は無料である。国は才能ある生徒に対して援助することができる。

第24条 公立・私立を問わず、児童には、医療・歯科・眼科の治療を無料で受けられる。成長のために休暇と娯楽および適当な運動の機会が与えられる。

第25条 学齢の児童、並びに子供は、賃金のためにフルタイムの雇用をすることはできない。児童の搾取は、いかなる形であれ、これを禁止する。国際連合ならびに国際労働機関の基準によって、日本は最低賃金を満たさなければならない。

第26条 すべての日本の成人は、生活のために仕事につく権利がある。その人にあった仕事がなければ、その人の生活に必要な最低の生活保護が与えられる。女性はどのような職業にもつく権利を持つ。その権利には、政治的な地位につくことも含まれる。同じ仕事に対して、男性と同じ賃金を受ける権利がある。


現憲法とはずいぶん異なる点もありますが、基本的な方向は一致しています。

彼女がいなければ、今の日本国憲法も形になっていたに違いありません。

ご冥福をお祈りいたします。


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