文部科学省より生徒指導提要の改訂に関する協力者会議(第4回) 議事要旨を紹介します。
ここから https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/168/gijiroku/1413457_00005.htm
1.日時
令和3年10月15日(金曜日)10時00分~12時00分
2.場所
Web開催(Webex)
3.議題
- 生徒指導上の課題(不登校)に係るヒアリングについて
- 生徒指導上の課題(いじめ)に係るヒアリングについて
- 生徒指導提要(改訂)の目次構成案
- その他
4.出席者
委員
浅野委員,池辺委員,石隈委員,伊野委員,大字委員,岡田 俊委員,岡田 弘委員,奥村委員,栗原委員,笹森委員,七條委員,髙田委員,土田委員,野田委員,針谷委員,藤田委員,丸山委員,三田村委員,三村委員,宮寺委員,八並座長,山下委員
ヒアリング協力者
新井委員, 伊藤委員
オブザーバー
小野 オブザーバー,滝オブザーバー,宮古オブザーバー
文部科学省
伯井初等中等教育局長,淵上大臣官房審議官(初等中等教育局担当),鈴木生徒指導室長
5.議事要旨
【座長】 定刻になったので、第4回生徒指導提要の改訂に関する協力者会議を開催する。
本日、生徒指導上の課題に関してヒアリングを行う。まず、不登校の問題について、奈良女子大学の伊藤委員よりヒアリングを行い、第2部第1章のいじめの章について、関西外国語大学の新井委員にサンプルを作成していただいたので、ヒアリングを兼ねて御説明いただく。その後、フリートーキングを行う。
次に、前回会議後に事務局の方から委員の皆様にメールで照会させていただいた目次構成案について、いただいた御意見をまとめているので、事務局から御報告させていただく。その後、残りの時間を2回目のフリートーキングとして、全体を通して御意見をいただく。
まず、会に先立ち、事務局より2点、御連絡をお願いしたい。
【事務局】 9月21日付で人事異動があり、御連絡させていただく。
まず、初等中等教育局長の伯井美徳から。
【事務局】 生徒指導提要の改訂は極めて重要な話であり、よろしくお願いする。
【事務局】 続いて、初等中等教育局担当審議官の淵上孝である。
【事務局】 よろしくお願いする。
【事務局】 続いて、文部科学省では、児童生徒の問題行動・不登校と生徒指導上の諸課題に関する調査結果を一昨日の13日に公表した。文部科学省のホームページにおいて、調査結果及びその概要を参照できるので、御覧いただければと思う。
【座長】 それでは、議題に入る。生徒指導上の課題に関して、不登校の問題について、伊藤委員に資料1につき20分程度で御説明をいただく。
【伊藤委員】 不登校に関しては、1950年代後半から日本の社会では話題になってきたが、その頃から80年代にかけて不登校の数が増加していった。当時は登校拒否という呼び方が中心であったが、心の病気から教育問題へと広がり、教育現場ではカウンセリング・マインドという言葉が広がっていった。
92年の報告の中では、不登校はどの子にも起こり得る等、当時が神経症的な不登校が多かったということもあり、待つことや見守ることの大切さが強調された。
その後、2000年代にかけて不登校が多様化し、教育問題から社会問題へと広がっていった時代に入る。2002年9月から不登校問題に関する調査研究協力者会議というのが立ち上がった。議論の中心としては、待つという対応でいいのかというところがあり、結果として、ただ待つのみではなく、正しいアセスメントに基づく適切な関わりや働きかけが必要であるという方向に舵がきられた。
その背景としては、不登校が多様化し、虐待や発達的な課題を抱えた不登校など、待っていてはいけない性質の不登校が増え、このように方向転換がなされた。
その後、2000年以降不登校というだけで問題行動とはみなさないという見方が出され、2016年には教育機会確保法が公布された。教育機会確保法の不登校に関するところを見ると、まず1番には、不登校の児童生徒に対する教育の機会の確保が強調されている。魅力ある学校づくり、それから、登校という結果のみを目標としない、あるいは、不登校児童生徒の社会的自立を目指すこと。
それから、2番目で、夜間中学にも言及され、3番目では、民間団体、特にフリースクールなどとの連携が強調されて盛り込まれている法律となっている。
次に、問題行動等とはみなさないという見方に対する現場の反応をまとめた。
一つとしては、そのように言ってもらうことでゆっくり休める、ほっとするという保護者もいた。しかし、それだけでは不登校の子供や保護者の不安、心配は完全には払拭されていないのが現状。さらに、問題ではないということを、何もしなくていいと誤解する方もおいる。また、学校復帰ではないとすれば、その先にある答えを教えてほしいという親御さんの声も聞いた。
このようなことを踏まえ、不登校の子供たちの個に応じた支援は必要であるということが認識できる。
不登校については、年間30日以上欠席という定義そのものが漠然としており、いろいろなものが含み込まれている。例えば、いじめなどの人間関係、トランスジェンダーを抱えた子供たち、ゲーム依存の子供、それから、定義の中に経済的な理由は含まないと言われつつも、不登校の背景には見え隠れする虐待、貧困、さらに、ヤングケアラーの問題がクローズアップされている。
こうした不登校に対して、生物・心理・社会モデルという見方に基づいた多面的なアセスメントと、多職種、学校教員だけではなく、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、病院、そういった多職種による支援が必要であると再確認されているところ。
不登校の子供たちは学校に行きたくない、行くのがしんどいと言っていると聞くけれども、面接していくと、行けるものなら行きたい、安全な学校なら行きたい、しかし、行きたいと言ったらプレッシャーがかかるから、それも言えないと苦しんでいる子供たちもいる。それから、なぜ行けないのかは、子供たち自身なかなか言葉にできないので、そこを追い詰めないでほしいという言葉もよく聞こえてくる。
それから、学校がしんどいから学校を休むということもあると思うが、家にいるからといって必ずしも心から安らいではいない。昼夜逆転でのめり込んで楽しそうに見えても、それは本当に楽しんでいるのではなくて、時間があると悩んでしまうからであって、ゲーム依存も、一種の隠れ蓑であるということを子供たちから聞いた。
それから、よく親への思いとして、分かってほしいけれどもそれを言語化するのは難しく、その結果、行動化、身体化に出るということが不登校の中にも多く見えている。
不登校の子供たちから、そっとしておいてという話をよく聞くが、それは、何もしないでということではなく、普通に接してほしいということである。親御さんからそのような話を聞くが、それ自体すごく難しいと、親御さんの面接をしていて感じるところ。
最後に、問題解決に奮闘していくということも大事だけれども、一方で、完全な解決ではないにしても、問題、悩み、いろいろな不安を抱えながらの前進もあり得ると感じている。
不登校への支援ということで、多職種による支援が必要になっている。不登校の中身が多様化しているので、教育的な支援だけでなく、心理的、医療的な支援、それから、福祉、司法矯正の力を借りるケースも出ている。
学校内においては、教職員だけではなく、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーを交えたチーム支援、それから、学外の専門機関とのネットワークも大変重要になってきている。
不登校はどの子にも起こり得るため、不登校があるということを前提とした、いつでも相談できる学校内の体制が求められている。相談することへの偏見や抵抗をなくす工夫も大切で、ニュースレターを全校生徒に配付する、全員面接を行う、給食で学級を訪問するといった形で、カウンセリングを受けること、相談をするということは、弱い人間がすることではないということを、子供たちに周知徹底していくこと、そのような空気づくりをすることが求められている。また、子供だけではなく、保護者や先生方へのコンサルテーションも重要である。
チーム学校はもう当たり前のことになってきているが、学校内で組織的に対応するときに、フォーマルな組織に加えて、臨機応変に対応できるインフォーマルな組織というのも大切。
その目的としては、子供達の問題、悩み、ストレスに気づいて、それをアセスメントして、学校として共有し、さらには、家庭訪問、専門機関につなげる、スクールカウンセラーに任せるといった具体的な次の一歩を考えることが大事と思う。
総務省の不登校政策の評価の会議の議論の中で、学校復帰は絶対視はできないが、通学することの意味を見直すことも大切ではないかという意見があった。つまり、学校が全てではなくて、行きたくなる学校を考えるということにもつながる。
もう一つ、社会的自立という言葉が一人一人で異なるのではないかという論点があった。経済的な自立、心理社会的自立ではなかなか片づけられず、子供によっては、誰かにSOSを出すことも自立の一歩になるということもあり、問題や悩みを抱えながらの前進もあるという視点も臨床の場から求められている。
不登校に対するきっかけについて、データを3つ紹介する。1つ目は、不登校のきっかけについて学校側が回答した結果である。小学校、中学校のいずれも家庭に係る状況をきっかけとして挙げている答えが多く、中学校は友人関係も多い、そして、3番手に学業ということが不登校のきっかけと認識されていることが分かる。
ところが、追跡調査として文科省が行った結果を見ると、中3で不登校だった子の5年後に本人に聞いたところ、一番不登校のきっかけとして多く挙がってきたのは友人との関係で、2番目が生活リズムの変化、それから、3番目に勉強であり、家庭の状況はあまり上位には挙げられてなかったというのが結果として見える。
3つ目は、文科省の不登校に関する調査研究協力者会議の中で配付された不登校の調査の結果である。
これはその前の年に中1で不登校だった子供が、自分がなぜ不登校になったかというきっかけを、中2の子供本人が答えた結果である。一番多い原因が、身体の不調で、それから、学校関係が次に続く。そして、生活リズムの乱れも多い。一方、自分でもよく分からないと回答した子も多く、その前の追跡調査の結果では約5%であったものが、20%を超えている。不登校直後や渦中であるときというのは、自分で不登校の理由をなかなか言えないということもこの結果から見えてくる。
理由や原因は見る人の立場によって異なり、本人には語られないことも多い。したがって、他職種の目も加えたアセスメントが必要ということが分かる。
不登校に対する対応の実際ということで、未然防止について、普段からの観察、子供理解、学級づくり、相談体制、それから、身近な先生方のキャッチする力と共有する学校の空気が必要と思う。
早期発見については、休み始めのところでの介入と気になる生徒についての普段からの情報共有が大変重要である。アセスメントシート、アセスメントツールについては、いろいろな書類があるが、実施し、その後放置という場合もある。その活用の仕方、学校でどうやって共有するのかしっかりと考えていかなければならず、2回、3回と縦断で見ていくということも大事である。
不登校の対応については、家庭訪問、それから、別室、放課後登校がある。資料には専門機関も幾つか並べた。それと、コロナでクローズアップされた、オンライン、訪問型支援もある。特にオンラインによる教育は広がってきたが、全部オンラインにするわけではなく、不登校の子がそれを選択したいときに選択できるような、多様な選択肢の一つとして盛り込んでいくことが大事と思う。また、学力補償、進路相談も大変重要なテーマである。
保護者の支援については、保護者が悩んでいるということが大変多く、それが子供と負の連鎖になっていくということもある。不登校は親に原因があるというわけでは決してないと思っている。しかし、保護者が変わることで子供が変わることは多い。したがって、保護者を支える力が大事になっている。
高等学校についても多様化しているので、その子に合った進路を選ぶ、転学とか編入とかも含めて進路を考えていくことが大切と思っている。
今後に向けて、一番大事なのはアセスメントだと思う。不登校とは何かではなくて、目の前の子をアセスメントすること。どのようなしんどさを抱えているのか、あるいは、どのような強みがあるのか、どのような支援が必要か、誰を支援したらいいのかというところをアセスメントしていくためにも、チームによって組織的に対応するということが求められている。
保護者や先生を支える仕組みも求められており、社会的自立は多様な自立があり得るので、その子に合ったゴールの選択をしっかりとしていかないといけない。
それから、不登校を自分や自分の将来を考えるためのターニングポイントである、休憩地点と考えることも大切だと思うが、それに寄り添ってくれる先生や、スクールカウンセラー等とチームを組んで支援していく体制が不可欠である。(以下略)
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