【音楽ガチ分析】ベートーヴェン『月光ソナタ』第1楽章 ~ クラシックなのに転調ヤバすぎ。シンプルさ×反骨精神の旨い音楽
〈ベートーヴェン(Beethoven)〉 「楽聖」の異名を持つ、音楽史において極めて重要な作曲家の一人。 18世紀末~19世紀頭ごろを生き、古典派に分類される。 晩年は聴覚を失いつつも、重厚で重みのある音響を築いた。
〈総評〉 【楽式】 ・小規模なソナタ形式。 →複合3部形式とする分析も多いが、ソナタ形式のほうが妥当に思う。 →展開部は非常に短い。 ・ソナタの第1楽章は軽快で明るいもの、という慣習を打破した暗い楽想。
【リズム・拍子】 ・伴奏の音形は「ベタ打ちの低音+アルペジオ」が貫かれ、リズムは極度に単調。 →アルペジオの3連符がリズム的進行感をつかさどる。
【メロディ・和声】 ・メロディに起伏がなく、旋律感が希薄。 →ただし、メロディは常にオクターブ重ねられて重厚な響き。 →低音位もたいへん起伏がなく、メロディを食わずにじっとりと支える。 ・外声が2声の対位法を行っており、バランスがよい。 ・メロディや低音位に半音進行が多く、妖艶。 ・オクターブ重ねられた重厚な低音&メロディの間に、密集配分の和音が置かれ、バランスの良いヴォイシング。 ・第1主題の「付点8分+16分」のリズム、強烈なavoidを含む第2主題といった素材がきらめきを持つ。 →伴奏が平板で茫洋としているからこそ、意外な転調や第1&2主題の特徴がきらめく。 ・かなり自由かつ意外な転調が多い。 ・もったいつけた解決進行が多い。 →倚和音として「Iの2転」や「Vsus4」を多用。 ・ナポリのII(-II)が多用され、効果的。 ・短9の和音(V7(b9))、それを根音省略したdim7の和音も多用される。 →暗くドラマティックな響き。 【表現】 ・メロディとアルペジオを共に右手で奏させ、全体として3声部あるかのように聞かせていて面白い。 →ただ、そのせいでメロディの音域に制約が生まれて平板なメロディになったともいえる。