チャイコフスキー:幻想序曲『ロメオとジュリエット』(第3稿)(スコア付き)
ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー: 幻想序曲『ロメオとジュリエット』(第3稿) TH 42 ČW 39(スコア付き) 作曲年代:1869年(1880年改訂) 指揮:テオドレ・クチャル 管弦楽:ウクライナ国立交響楽団
00:05 Andante non tanto quasi Moderato 05:45 Allegro giusto 07:51 「愛のテーマ」 11:03 キャピュレットとモンタギューの戦いのテーマ 14:22 「愛のテーマ」 17:32 Moderato assai
《幻想序曲『ロメオとジュリエット』》は、ピョートル・イリイチ・チャイコフスキーが作曲した演奏会用序曲で、ウィリアム・シェイクスピアの同名戯曲による。29歳のチャイコフスキーがミリイ・バラキレフの勧めで作曲した作品で、調性や主題などバラキレフによって事細かに指示されたうえで作曲された。第1稿は1869年11月に完成し、1870年3月16日、モスクワにおいてニコライ・ルビンシテインの指揮によって初演された。初演は失敗し、バラキレフの助言で改訂が行われた。こんにち演奏されるのは1880年9月に完成した第3稿である。 曲は修道僧ロレンスを表すコラール風の荘重な序奏に始まる。続くAllegro giustoの主部 (05:45) では、モンタギュー家とキャピュレット家のいさかいを表す激情的な第1主題が現れる。次第に音楽は落ち着きをみせると、ロメオとジュリエットの恋を描く甘美な第2主題が現れる (07:51)。この主題は「愛のテーマ」としてよく知られる。第2主題が収束した後、再び第1主題が序奏の主題を伴いながら断片的に現れ (11:03)、両家が激しく争っている様子を奏でる。弦楽器が下降すると、オーボエにより先ほど弦楽器によって奏でられた2人が悩む様子のメロディーが演奏され (13:39)、それに続いて第1主題と第2主題が再現される。ロメオとジュリエットの恋を描く第2主題を弦楽器が演奏した後、トランペットが2人の死を暗示するメロディーを歌う (16:24)。各主題が交錯しながら盛り上がりは最高潮に達し、仮死状態にあるジュリエットを死んでしまったと勘違いしたロミオの気持ちを表すかのようにより一層激しい曲調になったあと鋭い1音 (16:57) が奏でられる。これはロミオが毒薬によって死んでしまったことを表している。また続くティンパニによる鋭い1音 (17:20) は目が覚めたジュリエットがロミオを追いかけて自死したことを表す。 ティンパニのロールが終わるとModerato assaiの終結部となる (17:32)。葬送行進曲風のティンパニの心臓の音を表す刻みに悲しげな第2主題が重なり、ロ長調で木管楽器が天に召される2人の様子を清らかに奏でると、最後はトゥッティの緊迫した和音で終わる。