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6月11日は新聞休刊日

2018-06-11 05:37:56 | 社説を読む
今日は新聞休刊日なので、昨日のコラムを紹介しましょう。

毎日新聞
・ 時計の針が右回りなのは日時計の名残という。古代エジプト人はオベリスクの影で時を計ったそうだが、東から南を通って西に沈む太陽の影は中心から見ると左から右に進む。といっても北半球での話だ

▲太陽が北を通る南半球では影は反対に動く。南米ボリビアの主要都市ラパスの議会議事堂には文字盤が正反対で、針も逆に進む時計が設置され、観光名所になっている。「南半球ではこれが自然」という理由だ

▲日時計は夜には使えない。そこで考え出されたのが水時計だ。日本書紀には天智天皇治世下の671年に「漏刻(ろうこく)」と呼ばれた水時計が「初めて時を打つ」という記述がある。この日が太陽暦ではきょう10日に当たり、1920年に「時の記念日」に指定された。天智天皇由来の近江神宮(滋賀県)では毎年「漏刻祭」が開かれ、時計業界関係者も訪れる

▲日本初の水時計は天智天皇が中大兄皇子(なかのおおえのおうじ)と呼ばれた皇太子時代に自ら作ったとされる。日本初の元号も皇子が関わった「大化の改新」の大化だ。律令国家を打ち立てるにはミクロ、マクロの「時の支配」が必要だったといえるかもしれない

▲そういえば、現代にも時間を自在に動かし、権力を誇示してみせた指導者がいる。北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長だ。3年前に韓国と30分間ずらした平壌時間を今年4月の南北首脳会談後に元に戻した

▲世界の耳目を集める米朝首脳会談が間近に迫った。時代がかったパフォーマンスより、実質的な議論に時間を使ってもらいたい。


日本経済新聞
・ 何らかの刺激で皮膚に炎症が起きることを「かぶれる」という。「気触れる」と漢字では書くようだ。思想や文学に感化される意味もある。「恥の多い生涯を送って来ました」「白状し給(たま)え。え? 誰の真似(まね)なの?」。若き日に太宰治の一節にかぶれた方もおられよう。

▼70年前の6月13日は、その太宰が知人女性と東京の玉川上水に身を投げた日だ。遺体の発見は、くしくも誕生日の19日で「桜桃忌」と名付けられファンが墓に詣でる。「人間失格」など青春のナイーブな心を射る作品を次々と発表、戦前から戦後の混乱期を駆けた。わずか38歳の生涯だが、日本文学史上に深い刻印を残す。

▼そして、太宰と同じ年に生まれたのが松本清張である。「砂の器」など社会派の推理小説にとどまらず、古代や近現代史をめぐっても縦横の活躍をした。よく知られるように文壇へのデビューは40歳を過ぎてから。学歴もなく職を転々とする若き日々を自伝に「私に面白い青春があるわけではなかった」と書き残している。

▼地主の六男坊に、粒々辛苦の努力家。異質な2人が今も読み継がれる理由は何だろう。作品を通じ、作家が体現した人生のリアルな典型に触れられることがあるだろう。ページを繰ってディープな追体験をし、免疫を得て成長するわけだ。スマホへのタップで色々片付く現在、かぶれ体験が廃れはしまいか少し心配である。


産経新聞
・ どんな経験にも必ず「初めて」がある。サッカー日本代表にとっては、1998年のワールドカップ(W杯)フランス大会がそうだった。当時の日本代表監督、岡田武史さん(61)は自身の采配を評して「愚者のリーダーシップ」と振り返っている。

 ▼W杯への道のりも本番も手探り続きで「どう戦うか心得のひとつも教えてほしかっただろうが、オレも初めてなんだから…」。選手やスタッフの20年後を描いた新刊『日本代表を、生きる。』(文芸春秋)で著者、増島みどりさんのインタビューにそう答えていた。

 ▼「外れるのはカズ」という代表発表の衝撃も思い出す。事前合宿地のスイスで人気者の三浦知良選手らを代表から外し、自宅に脅迫状が送られた。ファンも経験値を積み重ねた今とは隔世の感があるものの、過激な行為へと走らせるほど初出場に国中が沸いていた。

 ▼6度目のW杯となる代表は、平均年齢が高く、1次リーグ突破の確率も低く見積もられている。それゆえ、出場3度目の長友佑都選手(31)が「年齢で物事を判断する人はサッカーを知らない」とツイッターに投稿し炎上したとの報には、意外な光を見た思いもする。

 ▼手加減のない批判は、サッカーが国民感情を揺さぶってやまないスポーツへと育った証しなのだろう。五輪は開催国の社会基盤を映し、W杯代表は国民性を映す。「日本代表を否定するのは、自分たちの可能性を否定するのと同じことに思える」と増島さんは言う。

 ▼肌の色も言葉の違いも貧富の差も問われない。小さな球体に選手は国の誇りを懸けて戦う。その舞台に立てるのは32カ国しかない。代表に賛辞も批判も送れる権利を日本人は今年も手に入れた。その幸運をかみしめて遠いロシアの地に声援を送る。


中日新聞
・ ある日、財布を拾う。落とし主は新聞社の社長さん。その縁で、新聞社の「坊や」(小間使い)として使ってもらえるようになって、「こいつ、なかなか書ける」と重宝がられる。やがて社長令嬢と恋仲になって結婚。会社を引き継ぎ、全国一の新聞にする…

▼これ、なんだと思われるか。作家、井上ひさしさんが高校の時に思い描いた将来の「計画」なのだそうだ。ドラマチックな筋だが、計画とは呼びにくい。現実の社会では、人はそうそう財布を拾わない。ことはトントンとは運ばぬ

▼井上さんの「計画」に倣えば、こんな具合か。貿易で損をしている。輸入品に高い税金をかける。他国からの報復で貿易戦争になっても大勝利。貿易赤字は減少。雇用は安定。「こいつ、なかなかやる」と人気になって…。トランプ米大統領の胸の内にある「計画」だろう

▼身勝手な米国第一主義の夢想。そのせいで今年の先進七カ国首脳会議(サミット)は大混乱である。米国と各国の対立が強まり、首脳宣言の取りまとめさえ難航しているとはただごとではない

▼トランプさん、当初は出席さえ渋ったとか。長年、国際社会をリードしたサミットの看板も泣く

▼サミット不要論を聞かぬではないが、この米大統領が在任中は続けたほうがよかろう。年に一回、参加国こぞって文句を言わねば、現実を見ないこの人の夢想はさらに悪化する。

※ 天智天皇、太宰治、松本清張、井上ひさし、長友佑都

 コラムはいつもおもしろい。

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