日記

音楽教室のことや、その日に起きた出来事をご紹介します。

茨木のり子さんの詩

2010-10-26 13:30:48 | Weblog
詩を読んで感想を書くというのはやぼったい気がしますが、
茨木のり子さんの詩集を買ったので、一編だけご紹介します。
有名なのでご存じの方も多いかと思いますが、私の一番のお気に入りです。




「自分の感受性くらい」

ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて

気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか

苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし

初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志しにすぎなかった

駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄

自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ




この詩は、のり子さんが戦争を体験した少女時代を思い出して書かれたものです。
読む人それぞれの状況で感じ方は様々だと思いますが、心にぐさっと刺さります。

壁にぶつかった時、窮地に追い込まれた時、どんな態度で越えていくかで
その人の真価が問われます。

私は、どんなことでも人のせいにするのは嫌いです。
「だって誰々がこう言ったから。。。」と言ってしまうのは簡単ですが、
やはり、潔く自分の責任として受け止めたいと思います。

たたみかけるように「するな」と訴えて、最後には「ばかものよ」とまで
言っているこの詩は、とても強い印象を受けますが、
人にそう投げかけているというよりは、むしろ弱い自分を鼓舞する
言葉のように感じられます。

音楽は想像力をたくさん使って表現しますが、詩は言葉が感情を
ダイレクトに伝える力を持っています。
それだけに、本当に慎重に繊細に言葉を重ねないと、たった一行で
全体がだいなしになってしまうこともあります。

私は全くの素人なので、書けないくせに批評をするのは自由です。

寺山修司の詩などを読んでいると、よく最後の一行で現実に
引き戻されてしまうような残念さを感じることがありますが、
茨木のり子さんの詩は、最後まできりっと引き締まっていて、
大変な時代を生き抜いた女性の覚悟のようなものを感じとることができます。



さて、もうアラサーだから。。。と、年齢のせいにするのはやめて、
潔い気持ちでモーツァルトの暗譜に取りかかります!!

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