仕事が終わって夜の八時九時になってしまう。
飲み屋が十時で閉ってしまうからせわしない。
しばらくやめていた新規開拓をやる。
面白そうな店見つけた。
美人の部類に入るのだろうが男運の無さそうな顔つきのママが一人で経営している店だった。成人した娘が二人いるそうだ。
裏通りの場末感全開のビル3階でエレベーターなし。
そんなところにふら~っと一人で飛び込むオレも十分怪しいよ。
でも酒飲みは酒場の飛び込みは得意だ。
怖くもなんともない。
食いしん坊が美味しいお店をどんどん見つけるのと一緒だ。
3月にオープンしてそんな立地条件のところでおまけにコロナだ。
客が一人もいなかった。
最初カウンターの奥に常連がひとりいるなと思ったらママの娘だった。
最初こ汚い兄ちゃんかと思った。
客もいないからカラオケモニターらしきに日本のハードロックバンドの
ライブがガンガン流れてた。その子の御贔屓らしい。
複雑な家庭。複雑な人生の過程。人生いろいろ。酒の種類もいろいろ。
浮気性のオレは一ヵ所に留まれない。
行きつけの店があってもいい。だけど留まれない。
一ヵ所だけに通す奴もいるがそういうのとは友達になれない。
同じ場所に住み続けられないのと同じだ。
遊牧民なんだよ。
酒の海に漂流しているのだ。
でもアル中じゃないよ。
と言ってる時点でアル中なんだよ。