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酔いどれの誇りと踊る熊へ

京極夏彦「嗤う伊右衛門」の虜

2022-07-28 16:35:13 | 雑感等々
実は密かに読んでいた。
誰に隠すことないが。
読んだ。

四代目鶴屋南北の本は有名だ。

登場人物は一緒だ。
キャラクターも濃すぎる面々だ。

結論。
感動。
伊右衛門と御岩の夫婦のなりゆき。
京極の新たな解釈が入り、俄然際立ち魅力的になる。
苛烈のごとく、突然炎のごとく、激しく美しい。

ヒュ~ドロドロの物語ではない。
幽霊は出てこない。

完全に業の闇を描いた、「ヒトコワ」の極致。
化け物は、人間。

なぜ最後に伊右衛門は「嗤ったのか」
何に?誰を?
皆まで言うまい。

お岩がイイのです。
これは惚れる。
「提灯御岩の章」がとにかくいい。

一途な愛とはなにか。
一途の向う側に、三途があるのか。
深く愛し合う夫婦とは地獄の底まで深くということか。
本人同士しか分からない。
はたから見れば狂気の沙汰。

京極の無駄を省いた完璧な筆致でグイグイ迫る。コワすぎる。
複雑に絡んだ人間関係をさばきキャラクターを浮きだたせる力技。

最後の阿鼻叫喚殺戮シーンは大サービスだ。
それでもクライマックスに辿り着くまでのお岩と伊右衛門との絡みと
伊右衛門に向ける気持ちの吐露に感動の涙。

ここには弱いお岩はいない。同情されるような弱さは微塵もない。
誰のせいにもせず身に降りかかった火の粉は自分で受ける潔さ。
強くしなやかでしっかり自分自身を持っている自立した女がいる。
これは惚れるよ伊右衛門じゃなくとも。
でも相応しいのはこの男だ。





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