★抗ウイルス薬の「アビガン錠」に関しての情報
日本発「エボラに効く薬」は、日陰者扱いされた薬だった?
エボラ出血熱の脅威から世界を救うかもしれないと、ニッポンの薬が注目を集めている。
実はこの薬、医薬品としてのデビューは、はなはだ不本意なものだった。
富士フイルムは2014年10月20日、インフルエンザ治療薬「アビガン(商品名)」を追加生産すると発表した。
海外のエボラ出血熱患者への投与が目的で、同社は原薬の30万人分を錠剤に加工する方針だ。
アビガンは、同社のグループ会社・富山化学工業が開発した抗ウイルス薬「ファビピラビル」の商品名。今年3月に新型インフルエンザ治療薬として、厚生労働省の承認を得ている。
タミフルに代表される従来のインフルエンザ治療薬は、細胞の中にウイルスを閉じ込めて感染を防ぐタイプだった。
これに対し、アビガンは細胞の中でウイルスの遺伝子複製を阻んで増殖を防ぐといった新しいメカニズムを持っている。
アビガンを開発した富山化学とは、いったいどんな会社なのか。医薬品に詳しい医療ライターの小沼紀子氏がこう解説する。
「富山化学は、感染症治療薬や抗炎症薬などの医薬品の開発力に優れた製薬企業です。
研究開発に特化した会社で、抗生物質や抗リウマチ薬などを開発したほか、アルツハイマー病治療薬の研究を進めています。
富士フイルムが目を付けたのは、富山化学の持つ新薬開発力です。
08年の富山化学の買収を足掛かりに医薬事業に本格参入することが狙いでした。
当時、開発中だったアビガンの開発を加速させて発売したのです」
この薬は、紆余曲折を経て世に送り出された。
そもそも富士フイルムは、タミフルのような多くの人に使われるインフルエンザの薬として売り出す予定だった。
しかし、国内の臨床試験データが不十分だったため、国の承認も、タミフルが効かない患者や新型インフルエンザに限るという条件付きのものとなった。
つまり、アビガンは、通常のインフルエンザ患者には使用されず、パンデミックが起きた時に政府に提供する非常用薬という位置づけになったのだ。
非常用の薬では、年間110億円の売上高を誇るタミフルのような大ヒット商品になる見込みはない。
富士フイルムの担当者はこう話す。
「アビガンは日米で並行して臨床試験を進めていました。
ただ、米国で効果を得られたデータは、国内の試験と用法用量が異なっていたんです。
このため、季節性インフルエンザを対象とした追加の臨床試験を進める予定です」
要するに、タミフルのように使われるには、追加試験の結果を待たねばならない。
大ヒットを期待されながら、"不遇な存在"に転落したアピガン。
しかし、思わぬ転機が訪れた。
動物実験ではあるが、エボラウイルスに「抗ウイルス効果」が確認されたのだ。
富士フイルムによると、今回の感染拡大で、西アフリカからフランス、ドイツ、スペイン、ノルウェーの4カ国に搬送された4人のエボラ出血熱の患者に緊急対応としてアビガンが投与された。
アビガンを投与された患者(ただ、他の薬と併用された)は、回復に向かったという。
さらに、今年11月に、フランスとギニア両政府がエボラ出血熱を対象とした臨床試験を開始する予定だ。
大きく風向きが変わった。
『ウイルス感染から身を守る方法』(河出書房新社刊)の著者で感染症学が専門の、新渡戸文化短期大学の中原英臣学長はこう見ている。
「欧州への感染の広がりをみると、エボラ出血熱が日本に上陸する危険性は高い。
国内に効果がある薬があれば、二次感染の拡大を防ぐ可能性も高くなる」
アビガンが生まれた、富山化学の研究所は、「富山の薬売り」でおなじみの富山市にある。
TOYAMAの名が、エボラの特効薬を生み出した救世主として世界にとどろくことになるかもしれない。
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