この季節の鎌倉は紫陽花見物の観光客でごった返しています。10年位前は紫陽花の名所と言えば、北鎌倉の明月院くらいでしたが、今は江ノ電の長谷駅、極楽寺駅の近辺にある長谷寺、御霊神社、成就院、極楽寺を巡るコースが人気となっています。この季節、地元住民は江ノ電の混雑で迷惑するのですが、見物客が買い求める土産物などの消費額もばかにならず、紫陽花の経済効果も捨てたものではありません。
さて紫陽花の花の種類については多くの本や雑誌で紹介されていますので、そちらにゆずりますが、最近『アジサイはなぜ葉にアルミ毒をためるのか』(渡辺一夫著・築地書館)という本を読みましたので、「きれいなものには毒がある」という話をしたいと思います。
紫陽花と言えば「明月院ブルー」で知られているように、やはり鮮やかな青色が人気ですよね。雨によく似合う色で、梅雨の時期にピッタリ。私も好きな色です。ところが実はこのブルーは、紫陽花の細胞の液胞にあるアントシアニンという色素にアルミニウムが作用して青色になるとのことです。土壌にアルミニウムが含まれていると、根の生長を阻害するので、紫陽花はアルミニウムを吸収して液胞閉じ込めます。秋になれば葉を落とし、また土に戻すのですが、そんなことを繰り返し大きくなっていくようです。
ということで、人間がアルミニウムが閉じ込められた葉を食べれば中毒を起こし、死に至ることもあります。くれぐれも紫陽花の和菓子に添えられている葉っぱは食べないでください。またアマチャ(甘茶)はヤマアジサイの変種で、これを飲んだ子供が中毒を起こした例もあるようです。ちょっと恐い話をしましたが、これで紫陽花の価値がさがるわけでもなく、健気に生きる姿をみますと、一層、青色が美しくみえます。