2月11日。材木座にある長勝寺で行われた「大国祷会成満祭」を見学しました。千葉県市川市にある法華経寺の道場にこもり、百日の間「寒の荒行」を積んできた修行僧がこのお寺で最後の水行を行います。午前10時30分に「水行」という掛け声と鐘の音を合図にはじまり、うちわ太鼓に導かれた6人の修行僧が褌一枚となり水行場で、経文を唱えながら手桶の水をかぶるのですが、裸の体はみるみる紅潮し、湯気が立ち上ります。水行を終えた修行僧の達成感あふれる清々しい表情が印象的でした。
さて長勝寺のあるこのあたりは、安房から鎌倉に入った日蓮が初めて草庵を結んだところとして知られ、鎌倉時代は大町の妙法寺、安国論寺ある松葉ヶ谷を含め日蓮が約20年間過ごし、『立正安国論』の著作や、「松葉ヶ谷の法難」の舞台となった聖地となっています。
百日間の厳しい荒行に耐えた修行僧の一念は、750年以上も前に日蓮が憂国の想いで書き上げ、死をも覚悟して時の執権である北条時頼に提出した『立正安国論』の実践でしょうか。強い意思が感じられました。『立証安国論』に「まず国家を祈って須(すべか)らく仏法を立つべし」。また「仏法を宣揚するにあたって真っ先に願うべきことは、仏法存続の基盤である国土と人民の安泰でなければならない」という文章(『日蓮 立正安国論』 佐藤弘夫)があります。権力者(北条得宗家)の仕事は国家を正しく治めることだと言い、批判している訳ですから、現代ならともかく鎌倉時代にあっては決死の覚悟での建白だったと思います。
それにひきかえ、今の時代は良いですね。大衆に迎合した心地よい意見を述べていればいいのですからお気軽です。経文を唱え、粛々と水をかぶる修行僧をみると、なんか恥ずかしくなりました。