木村忠啓の大江戸百花繚乱

スポーツ時代小説を中心に書いている木村忠啓のブログです。

鬼、河童に濁流の水飲まされる - 2

2007年02月09日 | 一九じいさんのつぶやき
東吾野
ひがしあがの、と読む。
池袋と秩父を結ぶ西武池袋線の駅だ。
池袋からは東武東上線という線も出ている。
東武は、東京と武州を結ぶ線だからその名前がついているが、西武線の西とはどこだろうなどと考えていたら、東吾野であやうく降りそびれるところだった。どうも、ひとつのことを考えると、他のことが考えられなくなるのが俺の欠点らしい。
腕にしたカシオのプロトレックを見る。
11時。
ひとつため息をついた。
シューズ、書籍。
そして、方位と高度が計れる腕時計まで買ってしまった。
せっかくだから、と一番いいやつを選んだ。
値段は・・・言いたくない。
衝動買いも俺の欠点らしい。
いや、これは純然たる欠点だ。
「まあ、なんとかなるさ」
この開き直りの速さは、俺の長所でもあるが、金のたまらない理由でもある。
それにしても、空が青い。
景気付けに持ってきた缶ビールを開ける。
うまい。
青空の下のビール。
なんて健康的なんだ、と喜んだのもつかの間。
舗装道から山道に入ったととたんに急登が俺を待ち受けた。
来るんじゃなかった・・・
ポツリとそんな愚痴がもれた。
もともとの目的地は、越生方面だ。
それをハイキング兼ねて東吾野から行こうと思ったのは、本ばかり読んで、いっぱしのハイカーになったような錯覚に陥った俺の勘違いだった。
さっき飲んだビールが汗になって噴出す。
心臓の鼓動は激しく、日ごろの自分の運動不足を思い知らされた。
「こんにちは」
そんな俺を老夫婦がさわやかに追い抜いて行く。


コメント
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