木村忠啓の大江戸百花繚乱

スポーツ時代小説を中心に書いている木村忠啓のブログです。

殿さまのお言葉

2015年02月22日 | 江戸の話
江戸時代、殿さまは、家臣に対してどのような言葉を話していたのだろうか。
現代で言うなら、天皇陛下を当てはめると理解が深まる。
天皇陛下は寡黙である。
江戸時代の殿さまも、とにかく寡黙だ。

大垣藩は、戸田家が代々、殿さまを勤めた。
戸田氏教が参勤交代から帰る際、国家老三人が出迎えに出た。
殿さまの言葉は、
「出たか、との御意これあり」との伝言。
登城し、お目見えすると、
「久しうで」
の一言。
上京の際、見送りに出ると、
「息災でとの御意これあり」
の伝言。
片言だけで、主語も述語もない。
戸田氏教は、宝暦から文化年間、江戸中期の人物でえあり、かつ老中主座を勤めたほどの大物。
江戸末期ともなると、片言だけしか話さない殿さまでは機能しなかったであろうが、この頃はこんなものだったのかも知れない。

だが、下って幕末、最後の藩主・戸田氏彬の正室である大栄院の話がある。

上段の間で威儀を正して座っている大栄院に向かって、頭を下げ畳に手をついて、「ご機嫌うるわしく新年をお迎えあらっしゃいまして誠におめでたく恐悦に存じ奉りまする」と、教えられたとおりに申し上げると、ただ一言「めでとう」と仰せられてお立ちになった。

家老であった戸田直温の回想である。
「おめでとう」の「お」の字まで取っているところに封建主義の徹底した上下関係が感じられる。


参考文献:殿様のくらし 清水進 大垣市文化財保護協会


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太秦ライムライトと福本清三さん

2015年02月01日 | 映画レビュー
「地元を大河ドラマの舞台に」といった活動を行っている地域は少なくない。
「八重の桜」だとか「黒田官兵衛」などのヒットを見ても分かるように、経済効果があるのだろう。
しかし、気がつくと、「水戸黄門」の放映も終わり、NHK以外で時代劇はほんの1本か、2本しか放映していない。
「時代劇ブーム」と言われているのは本当なのだろうか。
自分自身、時代小説を書いていながら、時代劇はあまり観ていなかったので、時代劇衰退の原因はよく分からない。
ただ一つ、勧善懲悪の時代劇において「正義の主人公」を演じることのできる説得力のある俳優が少なくなったことが要因の一つのように思えてならない。

「太秦ライムライト」に主演した福本清三さんは、説得力のある悪役だ。
福本清三さんがにわかに脚光を浴びだすようになったのは、「ラスト・サムライ」に出演した頃からである。
「ラスト・サムライ」は2003年の映画だから、早いものでもう10年以上も前の映画になった。
その頃はまだ、「水戸黄門」も放映されていたのだから、隔世の感がある。

脇役に徹して何十年。
どう斬られれば主役が引き立つか、を考えて稽古する毎日。
福本さんの殺陣の切れは、さすがに一流だ。
斬られたあとで、後ろにエビ反りになりながら倒れるところなど、凄い。
よほど身体が柔らかくないとできない。日頃の精進あっての所作だ。
「どこかで誰かが見ていてくれる」
福本さん自らの著書のタイトルともなった言葉が映画の中にも出て来る。
本当、そうだよなあ。
努力がすぐに認められるとは限らない。
実際は、どんなに努力しても、認められない場合の方が多い。
そんなとき、どうするのか。
諦めてしまうのか。自棄になるのか。
それとも、努力を続けるのか。
努力が、自分の思い描いていた結果を導き出してくれるときばかりではないが、夢があるなら、諦め悪く一歩一歩努力していくしかない。

ところで、映画の中で、殺陣のシーンをCG合成で撮ろうとする監督が出て来るが、本当にそんな日が来るのかもしれない。
そんなものは、時代劇とは呼びたくないが。

アメリカでも西部劇は衰退の一途のような気がするが、福本さんと、ハリウッドの最後の西部劇スター、たとえば、クリント・イーストウッドが、東京で会ってお互いに何かを感じるって映画は作れないかな。


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