木村忠啓の大江戸百花繚乱

スポーツ時代小説を中心に書いている木村忠啓のブログです。

ゼリー王国・豊橋~鈴木菊次郎

2009年04月03日 | 明治のはなし
豊橋がゼリーの一大生産地であることは、あまり知られていない。

明治元年、田原に鈴木菊次郎という人物が誕生した。
菊次郎の家は代々、大工を営んでいた。菊次郎も大工であったが、30歳の頃、たねを妻に迎えたことにより、彼の運命は大きく変わった。
田原地区では、内職で飴を作り、販売することがよく行われていた。
たねも、飴の製造を行っていたが、菊次郎は、独自の製飴機を発明。
さらに、飴の原料に当時安価であったジャワ米を使用することで原価を抑え、利益を得る。
翁飴」とネーミングし、販売を軌道に乗せた菊次郎は、大正に入ると、独自のゼリーを作り始めた。
この際に、ゼリーとゼリーがくっつかないように、オブラートを使用したのも、菊次郎の独創である。
この包装用のオブラートは特許化され、ゼリーにはなくてはならないものとなった。

ここでいうゼリーとは寒天を原料とし、砂糖、水飴、香料などを添加したものである。
このゼリーの出荷量の8割は豊橋が占めるという。
知らなかった。

鈴木菊次郎については、ここ

ゼリーについてはここ

(リンク修正H25.2.4)

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カメと犬とCome here

2009年01月13日 | 明治のはなし
急に寒くなりました。
みなさま、ご自愛のほどを。

かく言う私もおとといくらいから、風邪気味で熱っぽかった。
そこで、昨日はぬるめの風呂に長く入ろうと本を持ち込んだ。
本は以前にも引用したことのある「明治百話」。
忘れていた部分も多く、すっかり長風呂になってしまった。

幕末から明治初期には、嘘のような実話が数多くしていて面白い。
明治には、飼い犬に「カメ」と付ける人が多かった。随分とベタであるが、実はこれ、ハイカラ(!)な名前であった。
洋人が飼い犬に向かって「Come here!」(来い)と呼んでいるのを聞いた横浜の日本人が、これはなかなかいいと思い、自分の犬にも聞き真似で「カメ」と付けたのが語源とされている。

これを私が読んだのは、確かカッパブックスの「英語に強くなる本」(岩田一男)ではなかったか、と思う。
この語源については、知ったときから何となく、違和感があった。
それは、単に「Come here」が「カメ」に聞こえるかなあ、というものである。
「Thank you」を日本人は「サンキュー」と発音するが、インドネシアの人は「タンキュー」に近い発音をしていた。
「three」も同じだ。日本人の「スリー」に対してインドネシア人は「ツリー」と発音する。頭では「three」が「スリー」でも「ツリー」でもないと分かっていても、目の前で「ツリー」と言われると、「木」を想像してしまう。
これは、フリガナの功罪である。日本語にない発音を表記するから仕方がないのだが、あくまでも「Thank you」は「サンキュー」ではない。
だが、フリガナが頭にインプットされた我々には(私だけ?)、「Thank you」という発音を聞くと、自然に「サンキュー」というカタカナが出てきてしまう。
逆に言うと、それまで英語に接していなかった人は、もっとピュアで、「Thank you」を英語として聞いていたに違いない。
もどって、全く英語の知識のない人が「Come here」という語を聞いて「カメ」と聞こえたかどうか。
あまり、そう聞こえはしないような気がする。
そうすると、表記した文字からおもしろ半分に「カメ」が編み出されたような気もする。

そのようなことを考えていたら、「カメ=方言説」をとる方がいらっしゃることを知った。

’カメ’(犬)は外来語か?

という論文である。東北では、犬をカメと呼ぶ地方があると指摘し、更にオオカミを、オオカメと呼ぶのは日本全国、広範囲で行われているとする論者の意見は鋭く、的確だ。

この論文を拝見して、ますますカメ=外来語説というのが怪しく思われてきた。
もともと、犬に「カメ」と名付けた横浜の日本人がそんなに多かったのだろうか。
なんとなく、この語には、今で言う都市伝説的な匂いがする。
「横浜の人は飼い犬にカメという名前を付けている。聞けば、勘違いだというが、なかなか洒落ているじゃないか」、という噂が尾鰭が付いたうえで、横浜以外の地方に伝播していったのではないだろうか。

この手の話は、ウィットとユーモアにも富み、飲み屋で話すネタとしては最適だ。
話は、信憑性よりも面白さが優先されて広まり、いつの間にか既成事実のように扱われるようになっていったのだろう。

永年のつかえが取れたようですっきりした。
今日は、「明治百話」から笑い話をピックアップする予定であったが、予定変更です。
そちらのほうは、また次回に、お話させて頂きます。

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