硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

「ストレイ・シープ」 第20話

2023-03-05 18:15:30 | 小説
「ナミ」には、経験値があった。だから、どんな診断結果が出ても、これからの事を考えられる余裕があった。
だからこそ、「リノ」の言動の根源が、ただ、怠惰なものなのか、環境から構築されたものなのか、疾患から発するものなのかを見極める必要があり、その為には、信頼できるドクターに診てもらう事が重要であった。
そこで、「ナミ」は、以前勤めていた病院のドクターに事前に相談を入れて、診てもらう段取りをつけたのであるが、受診中は保護者のように「結果」を心配し、色々と考えを巡らせていた。
そして、ドクターは「リノ」の症状を、「統合失調症」と、診断すると「ナミ」は、納得したようであったが、30歳になった「リノ」は、その事実を受け入れらなかった。しかし、それが現実であった。

「リノ」は現実を受け入れられないまま病院での結果を両親に告げると、母はショックを受け、「リノ」に感情をぶつけたが、「私は、お母さんの子供だから」と、言うと黙ってしまった。

それに比べ、父親と旦那は、まったくの無関心だった。

「リノ」にとっては、それが普通であり、「リノ」の性格上、他と比べる事もしなかったので、「リノ」自身には何も問題はなかった。
しかし、客観的に見れば「リノ」が抱える問題は多岐にわたっていて、どこまで干渉してよいのかさえ分からなかったが、目下の問題である統合失調症自体は治療を受けていれば回復する事例も多いので、「ナミ」は治療を受けながら施設で働く事を進め、サポートを続ける事にした。

しかし、「リノ」の気持ちは一向に好転せず、「ナミ」のLINEからは、

「覚えようとしない」
「できませんと言う」
「愚痴ばかり溢す」
「やろうとする努力が見られない」

というワードで占められていた。