和紙を作る家に嫁いだ嫁のブログ

親子五代に渡り受け継がれた和紙作りの伝統を守るべく今日も奮闘する『和紙を作る家』に嫁いだ嫁のブログ

只今、修行ノ途中ナリ。

2014-02-14 07:00:00 | 仕事風景
スッキリしない腰いたの憂鬱に、


追い打ちをかける息子のマンションの管理人さんからの電話…


息子の部屋から聞こえる麻雀パイの音がうるさい…とお隣さんから苦情が出ている…との事でした



管理人さんからの電話の翌日、教習所に通う為に帰省した息子に、


こんこんと説教した事は言うまでもありません


もう、ほんとに…


私の憂鬱を倍増させてくれるバカボン(馬鹿なボン)です




私の憂鬱の原因は、


スッキリしない腰痛と、バカボンの他に、


実は、もうひとつあります




そう…


今、取りかかっている仕事…



漆(うるし)をろ過する為の紙…



そうなんです。

『漆こし』の紙に取りかかっているところに私の憂鬱はあります


この漆こしの紙…


叩いて溶かした楮の原料を何回も何回も洗い、

精製に精製を重ね、長く残った繊維だけを漉くという、


難易度の高い技術を要する紙なんです。


漉くのも乾燥させるのも、マスターするまでには、何年もかかります。



私の担当は、乾燥の仕事。


これが、まだ私、思うように出来ないんですよね


向こう側が透けて見えるほどの極薄の紙だけに、扱いが超~難しくって…





真冬に雪のチラつく中、川に入って楮をさらしたり、

真夏の炎天下、楮畑の草刈りをしたり…


和紙作りの仕事はとても過酷で重労働ですが、
それを苦と感じた事はこれまで一度もありません。


し、しか~し


自分の腕がまだ一人前でなくて、思うように仕事が出来ないこと


私にとって、これほどツラい事はないのであります


毎回『漆こし』の紙の注文が入ると、

ほんとなら有り難い注文と喜ばなくてはならないのですが、


なんだかちょっと憂鬱になってしまうのです




そんな憂鬱の真っ只中、


先日もまた、丹後和紙の記録映像を残す為の撮影に来て頂いていました





昨春から始まったこの撮影…


この一年、何度も遠方から足を運んで頂きました


私は、主人のように頭の回転も 言葉の回転も早くないので、カメラを向けられると脂汗、冷や汗しきり…

緊張の連続でしたが、でも、そんな中にも笑いあり発見ありのとても充実した時間でした。


先日の撮影では、工房の一室は実験室と化し、


極薄の漆こしの紙と通常の楮紙との違いを

特殊なレンズを使って、ミクロの世界で観せて頂きました。



楮にガンピの繊維を配合したもの。

繊維の短くて細かいガンピが混ざっているため紙の目が詰まっています。





漆こしの紙。

精製を重ね、長く残った楮の繊維だけを漉いているので、繊維の絡み合いの中にもこれだけのすき間が空いています。


このすき間から、漆をろ過していくのですね。

納得


同じ一枚の和紙でも、原料の処理の仕方や製法によって、

これだけ目のつまり具合が変わっていたのですね。


これでまた、お客さんにも自信を持って 自分達が作った和紙を勧める事が出来ます。



憂鬱…だなんて贅沢言ってないで、前向きに頑張らなくてはいけませんね。



しかし…



帰り際の監督さんの一言…


『今度は奥さんにも質問しますからね。』


ええっ((((;゜Д゜)))


勘弁して下さい



また憂鬱が襲ってきました




次回も

『私を撮らないで下さい、私に質問しないで下さい』オーラを出して撮影に挑むしかありませんね(苦笑)