和紙を作る家に嫁いだ嫁のブログ

親子五代に渡り受け継がれた和紙作りの伝統を守るべく今日も奮闘する『和紙を作る家』に嫁いだ嫁のブログ

紙漉き。

2017-09-30 21:00:00 | 仕事風景
暑さ寒さも彼岸まで…とは、よく言ったものですね。

お彼岸を過ぎた頃から、朝晩の気温は肌寒く感じるほど下がってきました。

気温が下がり、紙漉き屋さんには、ヤレヤレひと安心です。

九月に入った頃、

日中の暑さが少しやわらいだにもかかわらず、紙を漉く水の状態が悪い日が続いていました。

例年、季節の変わり目に約1週間ほどは、そんな時があり、どうにもこうにも紙を漉くのに苦心するのですが、

今年は特別で、その悪い状態がひと月近く続いていました。

水の状態が悪いと、紙を漉く時に入れるトロロアオイの粘液がまったく効かず紙を漉く事が出来ないんです(ヽ´ω`)トホホ・・

この間にも、たくさんの方からご注文は頂くのですが、

納得のいくものがなかなか漉けず、朝から漉いて積み上げた紙を、これではダメだ!と、一瞬にして全部潰してしまう毎日でした。

紙漉き場に、ピリピリムードの漂っていた九月。

私も、漉き場に立つ主人の顔色を見る大変な毎日でした(苦笑)


この事で作業は大幅に遅れましたが、

九月後半からの朝晩の冷え込み以来、ようやく水の状態が安定してきたので、

現在、巻き返しをすべく奮闘しているところです。

そんな、水の状態があまり良くない中でしたが、漆こし紙も漉いていました。



漆を濾す為の極薄の和紙…

本来なら、水の状態が安定した時期にしか漉かないのですが、

今回、特別に急ぎの入り用という事で、

納得のいくものが出来るまでにかなりの時間を費やしてしまいましたが、どうにか漉き上げる事が出来ました。


他の漉き屋さんに言うと「なんで化学糊を使わないのか?」と、言われます。


化学糊は、字のごとく、科学的に作られた糊なので、気温や水の状態に影響されずに漉くことは出来ると思いますが、

漉いたあとの作業や、紙になってからの事を思うと、

どんな影響が出てくるかわからないので、やはり私たちは使う事が出来ません。

私たちが、今、お客さんから求められている紙は、

文化財の修復紙などのように、何十年の時を経ても、変わらない質、科学的な薬品を最小限まで抑えた昔ながらの和紙なので、

自然や季節の移り変わりも受け入れながら、作り続けていくしかないのです。

(原始的&非効率的と笑われそうですがね…)