厳しい寒さは残るものの、暦のうえでは春を迎えました。
一日一日、日も長くなってきて、少~~しずつ春が近づいてきているようにも感じます。
10年に一度と言われた1月終わりの寒波、
我が家にとっては忘れられない最強寒波となりました。
昨秋より体調を崩していた義父が、
一月終わりの大雪の中、旅立ちました。
クリスマスには一緒にケーキを食べて、
お正月には お屠蘇とお雑煮で一緒にお祝いもしましたし、
人生初、デイサービスにも通い始めたところでした。
デイサービスでは、
懐かしい友と出会えたようで、
『◯◯さんに出会えた!』
『◯◯さんも来とった!』
『大きいお風呂は気持ち良かった~!もう少し入っとりたかったわ』
帰ってきてから義父の口は、しばらく止まりませんでした。
このまま元気になってくれるものと思っていたのに。
この先に義父の死が待っているとは誰も夢にも思っていませんでした。
今年に入って2回目のデイサービスに行った日、
『お風呂に入るのもシンドイと言われ、昼食もほとんど摂られませんでした…』
職員さんから連絡があり、主人が迎えに行って早退して帰ってきました。
その後、口から水分や食事が入りにくくなり、脱水、低体温状態。
かかりつけのお医者さんに毎日往診に来て頂き、また24時間ずっと点滴をしてもらっていたのですが、
家での治療が難しくなり、
救急車で運ばれ緊急入院しました。
救急搬送され、病棟のベッドの準備が出来るまでの時間、
主人と私は、義父の手を握りながら三人で貴重な時間を過ごしました。
『お義父さん、よう頑張ったねぇ』
『しんどかったねぇ、助けてあげれんでごめんよぉ…』
『元気になったらすぐ迎えに来ますから…』
義父の目からは涙が流れていました。
お医者さんが最善を尽くして治療して下さいましたが、救急搬送されて6日目の朝、義父は息をひきとりました。
駆けつけた義母、主人、私をちゃんと待っていてくれて、
主人の『ありがとうな』の言葉を聞きながら静かに眠るように旅立ちました。89歳でした。
嫁に来てから31年、
義父からは、怒られたりイヤミを言われてばかりで、良い言葉は一度も掛けてもらったことはなく、
言葉は悪いですが、本当に言葉が悪過ぎますが、私は義父のことをずっとくそジジイと思っていました。
でも、最後の一ヶ月、
義父はこんな口と態度の悪い嫁を頼り、自分ではどうにもならなくなってしまった自分の身を、私に委ねてくるようになっていました。
『ありがとう、ありがとう』と、世話をしたり、声を掛けたあとには、いつも感謝の気持ちを言葉や身振りで表してくれていました。
ありがとうと手を合わせる義父の姿は、本当に仏さんのようでした。
義父の気持ちに寄り添い、自分の出来る精一杯のお世話をしよう…
最後の一ヶ月は、ずっとそう思い過ごしました。
義父が亡くなる日の朝早く、
夢の中に私の母親が出てきました。
母は、黒い着物を着て、今暮らしている施設の方から私に手を振りながら歩いてきました。
今の母じゃなく若くて綺麗な頃の母でした。
『お母さん!ここはお母さんの来るところじゃない!』
お嫁に来た頃、この家の家風になかなか馴染めなかった私、
家を飛び出たり…と、良い嫁ではなかったので、いつも母が義両親に頭を下げてくれていました。
お母さん!早く施設に帰って!義父と義母に見つかったら、またイヤな顔をされてしまう!
母に駆け寄ろうとすると、
母の視線の先には義父がニコニコして座っていて、
母にお辞儀してくれていました。
母も深々とお辞儀していていました。
そこで目が覚め、ビックリして主人を起こしました。
義父の入院する病院から、血圧が低下しています。危ないのですぐ来て下さい!の電話があったのは、このあとすぐでした。
前の夜には、仕事を終えたあと、主人が『雪かきをしておこか!』と言うので、暗い中、投光器をつけて二人で雪かき。
そのお陰で、
車庫から車をスッと出すことが出来て、
義父の最後に間に合い、色んな事が繋がりました。
元気になったら、義父を家に連れて帰ってあげたかった。
叶わなかったけど、
義父が私の夢の中に出てきてくれたのは、義父が私を田中家の嫁としてようやく認めてくれたのかな?と勝手に思っている私です。
母は、
『娘がお世話になりました。』と、義父の最後を見送りに来てくれたのでしょうか…
ほんとくそジジイで、好きじゃなかったけど、
弱っていく姿を見て、
頼ってこられて、
自分の気持ちがどんどん変わっていくのが本当に不思議でした。
大雪の中のお葬式、
甥っ子や私の弟が雪かきの手伝いに来てくれて、家のまわりを広くしてくれました。
たくさんの孫たちに棺を運んでもらい、
家族葬にも関わらず、たくさんの方にお見送りに来て頂きました。
生前からの御厚誼に加え、
たくさんの方からお心のこもったお見送りをして頂き、さぞかし義父は喜んでいた事と思います。
本当にありがとうございました。
まだまだ未熟な私ですが、
義父の想いを継いで、
自分の出来る精一杯の事をして、
この家と家業をこれからも守っていこうと思います。
お義父さん、長い間、本当にありがとうございました。
感謝の気持ちでいっぱいです。