ここの施設では「お茶会」と称して1階のテーブル席で御饅頭とお茶が振る舞われる。
今日もいつものようにオソマツ君は妻君と一緒に出掛け、舞鶴ご出身の書家と話し込んでいた。
午後4時ごろだったが、もう夕暮れを思わせる程外は薄暗く寒そうな気配だったが、 思い切って、蓮池に出て、板張りの回廊を巡った。
さすがに風邪は冷たくすぐに身震いするほど背中が冷えた。 そして粉雪が舞った。こうなると、オソマツ君の童心が騒ぎ、 この雪を顔面で受けて時々舌で雪を舐めてみたくなる。
自然に童謡の「雪」が口をついて出る。「雪やコンコン霰やコンコン降っては降ってはずんずん積もる、 犬は喜び庭駆け回り、猫はこたつに丸くなる」と、うたいながら空を仰ぎ口を大きく開けて雪を口で受けて舐めていた。
10分もそうして遊んでいただろうか。背中が寒くなって身震いした。 これがオソマツ君にとって一番悪い事態である。体が体温を逃がさないように反応して血管を収縮させると、 その瞬間に血圧が急上昇するからだ。
それに気が付き急ぎ建物の中に逃げ込んで、一息ついた。 おもむろに体を動かしてみたが異常はなく、ホッとして部屋へ逃げ帰った。
80歳の老人が子どもに帰ってこんなことをしていて、体にいいわけがない、と反省頻り。 それでも何事も起こらずよかったと内心よろこんでいる。
書家のご子息は名大の医学部ご卒業で、尾張北部の大きな病院の院長さんだ。
オソマツ君は受験野郎で、名大の医学部がどんなに難しい大学かということを良く知っている。 書家のご子息は舞鶴の高校からこの名大にこられたのだ。
僕が其れを云うと、息子は家内に似たのだろうとさりげなくおっしゃる。ここが書家の偉い所だとしみじみ思った。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます