畑仕事も一段落、手帳にも空きがあるので近場の“湯巡り付き新緑散策”でもしようと張り切っていた矢先、チョットしたハプニングが起きた。公認事件名は「虚血性大腸炎発症」、自認ハプニング名は「わけのわからん下痢でマイッタマイッタ事件」
6月6日午後8時、腹痛・嘔吐・下痢という暴漢に襲われマイッタ・マイッタ。やむなく急患で江南厚生病院へ。ただちに次々と検査を受けさせられた。受け取った「診療明細書」によると、21個もの検査と緊急措置をしてもらっている。大きな機械の中を通る画像診断だけでも胸部X-P、腹部X-P、コンピューター断層、CTスキャンと続いている。まったく有難いことで、こんな田舎にいて安い料金で最高の診断を受けたと心底感謝している。そのとき頂いたのが公認事件名で、翌日必ず外来で受診することを命ぜられて帰宅した。
6月11日(昨日)「大腸内視鏡検査」。結果を15日外来でお聞きする段取りだが、まあ大きな問題はないとのこと。これで事件は終息に向かうわけだが、本人としては原因不明で、敢えていえば“これが老化というものか。つまりは基礎体力の低下か”と思っている。
余談だが、大腸内視鏡ではカメラが一番奥へ入った時点で空気を送り込み、大腸を膨らませて画像診断をする。問題は検査が終わった後の大腸内の空気である。空気が動くときにはお腹がゴロゴロしたり不気味に痛かったりして、沢山オナラが出る。事前にこれを説明してくれたうら若き女性看護師さんが「ガスが出ますがこらえないようにしてください」という。私はすぐに「出るのはオナラ! ガスが出てオナラが溜まってどうする」と思って聞いていたが、さすがに「オナラがお腹に溜まる」とは言わなかったが、出る方はガスとオナラが気軽に行き来していた。不用意にガスがでるようなら絶対元栓を止めねばならないわけで、こういう使い方は実に困ったものだ。(閑話休題)
かくして6月7日から今日まで、おかゆなどを少し頂いて終日ゴロゴロしていた。はかどったのは“読書”で、その時の気分で数冊の本の間を逍遥しながら、楽しい時間をすごした。以下にその報告をします。
この間に読み切ったのが「ふしぎなキリスト教」です。二人の碩学が、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教を仏教や儒教や我が国の神話と対比しながら、社会学的・比較宗教学的に分析し、これを通してヨーロッパを中心に発達した近代文明の特徴と限界を抉りだそうとしています。大澤さんが質問をして橋爪さんが答えるという対談方式記述されているが、その質問が、私たちが抱く疑問でありながら、なかなか口にし難い点を鋭く突いていて、なかなかに楽しい。もちろん答える橋爪教授の解説も的確で「目から鱗が落ちる」とはこのこと、という感じです。文化史的に世界の宗教に興味をお持ちの方にお勧めです。2012年新書大賞を受賞とか。
病院の待ち時間用は左の「父が子に教える昭和史」。戦前・戦中・戦後の大きな事件を36個とりあげ、その背景を解説しています。一つの事件を7~8ページに圧縮して解説していますが、われわれの世代はこれで十分分かります。筆者はそれぞれの専門家。昭和40年代に流行した「民主的史観」を懇切丁寧に批判している点も興味深いところです。初版は2009年ですから、この論争はもう少し続くのでしょう。
「名分どろぼう」の方は、何時かこんのブログで借用した「けつかうなるいもありかとう」の出典。実に面白く心の奥の方がゆったりしてくる。しばらくしてまた読もうと思っている次第。一つ二つ引用して紹介します。
◆千里の道も一歩から。きょうはロシア語の単語を一つ覚えた。
ズロース一丁(こんにちは) -米原万里「ガサネッタ&シモネッタ」(文春文庫)
◆戦時中の検閲に、ひどい例がある。長田秀雄の戯曲『飢渇』を上演するとき、公演の主催者は事前に台本を
警視庁に提出した。セリフの中に「接吻」という言葉があり、台本はその二文字が墨で消されて返ってき
た。
(検閲前) 奥さん、どうか一度だけ、接吻させて下さい。
(検閲後) 奥さん、どうか一度だけ、させて下さい。 (車谷弘「銀座の柳」、中公文庫)
検閲済みの台本で稽古をしたとき、そのセリフをしゃべる俳優はグッと言葉に詰まり、「とても、これは言
えません」と演出家に泣きついたそうである。
(以下次回)