今日(10月25日)の午後から27号台風が接近、風雨に注意とのこと。現在は煙霧と云ったところか。
菜花(なばな)とマリー・ゴールド、松葉も杉苔(すぎごけ)もたっぷりと水を含んで嬉しそう。今夏、連日の猛暑と乾燥で枯死が心配だった杉苔。見事に生き抜き、今、たっぷり水を含んで輝き始めた。杉苔が美しいのは何といっても雪解けの間から顔を出しているときだろう。庭の蹲(つくばい)もモスグリーンに染まった。
雨に阻まれて庭仕事ができないことを残念がりながら、内心は喜んでいるふしもあって、連日ゴロゴロしながら読書。今、読み終えたのが本川達雄著『生物学的文明論』(新潮新書)だ。本川先生は東大理学部生物学科のご卒業で現在東工大院教授、『ゾウの時間 ネズミの時間』などの著書がある。
本書の論旨は、人間を地球上の生物の中の一種と捉え、その視点から「文明」を論じようというわけ。博識な先生の語り口は、どのエピソードも面白い。たとえば「一呼吸の間に心臓は4回打ちます。これはゾウもネズミも、他の哺乳類の動物も同じです」とのこと。どうして同じなのでしょう。実は、そこに「進化」があったからだそうです。
ところで、ゾウもネズミも、生まれてから15億回心臓が打つと、それが寿命なのだそうです。実際にはネズミの寿命はせいぜい3年、一方ゾウの寿命はおよそ70年。つまり、ネズミの心臓はゾウに比べてそれだけ速く打っているのだそうです。
この原則を人間にあてはめると、人間の哺乳類としての寿命は41歳なのだそうです。初老とはよく云ったものですね。老眼になる、髪が薄くなる、閉経が起こる、これらが老いの兆候で、自然界ではこの頃脚力も衰え、目がかすんだりして、たちまち野獣の餌食になるのだそうです。
縄文人の寿命は31歳、室町時代でも30歳前後、江戸時代で40歳、昭和22年に至っても成人の寿命は50歳だったそうです。(これらのデータは遺骨から分かったもので、15歳以上で亡くなった人の骨から算出された余命の平均値のようです)。生物学的には人間は15歳で大人になり、30歳で孫が生まれ、しばらく孫の育児を手伝っていて、やがて天寿を全うするのだそうです。
ところで現在日本人の平均寿命は男が79歳、女が76歳です。さあ、この後、先生は何をどう論じられるのでしょうか? とりあえず先生は「還暦過ぎは人工生命体」と名付けて、「人工生命体」の生き方へ論を進められます。結論は本書に譲るとして、喜寿を迎えた筆者にとっては、考えることの多い一冊でした。