昨日の午後から今夕まで雨。畑の野菜たちには恵みの雨で、たっぷり美味しい「ミネラルウオーター」を頂いてホッとしていることだろう。そして私は配偶者のアッシー君の後は、終日ゴロゴロとしながらの読書三昧。
数日前から嵌ってしまった本が《『おどろきの中国』-そもそも「国家」なのかー》橋爪大
三郎、大沢真幸、宮台真司共著 講談社現代新書 です。このシリーズの一冊でキリス
ト教について書かれた本が面白かったことと、「そもそも“国家”なのか」というサブタイ
トルの惹かれて買い込んでしまい、読み始めたら止まらない。
中国の歴史に触れながら「国民性」を概観し、社会の仕組み、社会主義革命、毛沢東
と自在に話題を展開しながら、我が国との接点にメスを入れて行きます。
そこで描き出されるのが、我が国の一貫した稚拙さ。第一あの「支那事変」が、ズルズ
ルと深みに嵌っていくあたり、軍と政府とマスコミの、つける薬がない独善に驚かされま
す。国際感覚ゼロ、少し経済が好転すると異文化を見下す偏狭、異文化間の交渉で説
得や妥協のまずさ、など当時の偏狭がそのままそっくり現在に引き継がれているさまを
、見事に描き出しています。
三人のご専門は「社会学」。顧問格が橋爪さんで現在東工大の教授。奥さんが中国人
で、中国の知識人との交流が長く、洗練された北京語に、奥さんの友人をして「あなたの
ご主人、日本語が上手だね」と云わせるほどだとか。
尖閣問題で当時の関係者(本には実名あり)を、「あれほどの無知、無教養なリーダー
は米国はもちろん、中国にも台湾にも、いや北朝鮮いもいないでしょう」と述べ、現在の
日本を覆うポピュリズム(大衆迎合主義=軽薄な投票)を嘆いています。
この本に触発されて、ネットで購入したのが「真実の戦後史」。北方四島や尖閣、竹島
の問題がよくわからなくて、とくに尖閣で両国の監視船がにらみ合っているニュースを耳
にするたびに、暗い気持ちになってしまうからです。
こちらは「週刊誌」的で、気楽に読めますが私にとっては「眼から鱗が落ちる」感じ
です。
恥ずかしながら私、敗戦時に玉音放送で日本が受け入れた「ポツダム宣言」を初めて全
文読破しました。島の帰属は「白紙委任」、つまり連合国で決めてもらってい
いです、と云ったわけです。そこで問題になるのがルーズベルトとスターリンの口約束。ル
ーズベルトは日本本土上陸にあたって、満州に展開している関東軍をくぎ付けにしておく
ために、スターリンに参戦を促し、戦争が終わったら千島を全部ソ連に
あげるからと、日本への参戦を呼びかけ、スターリンはOKといい、その日は宿舎で
上機嫌だったといいます。
その後、訳が分からなくなるのが、冷戦とアメリカによる我が国の自主外交への
妨害。あの重光さんがダレスに恫喝された話は圧巻です。
それにしても、尖閣問題でニュース解説者が、中国の歪んだ教育によって中国国民は
真実を知らされていない、と分析していますが、その言葉はそっくり我が国にも
あてはまるわけで、山川の歴史教科書を例にとって、いろいろな事実が意図的に
ネグレクトされていることが紹介されています。
近代国家はどこの国もそんなもので、取り立ててそんなことを問題にするのはナンセ
ンスであって、そうした状況の中で、どんな駆け引きをしてどこで妥協するかが、
外交というものなのでしょう。
何とか早く、国際的な視野に立って巧みな交渉と妥協ができるリーダーと外交官と
世論が育たないものかなあ、と思える今日この頃です。