数週間ほど前のことである。1階の新聞エリアで、一人の老婦人に出会った。この方は、90歳過ぎと思われるが、オシャレな洋服を着ていつも館内を散歩されている。年の割に歩く速度は速いし、足元もしっかりしている。ただ変わっているのは一人で話していることがあるくらいだ。
毎日の行動故目立つ存在だし近寄らないで遠くから、眺めていることが多かった。だがその日は思わず声をかけてしまった。シルバー・カアーの上に洗濯かごを乗せその中に真っ白な猫を入れている。
「可愛いですね。」
「可愛いでしょ。褒めてくださっているのだから、ご挨拶しなさい。」
ごあいさつしなさい。って犬でもあるまいし、とおもっていると、暫く間をおいて、「ニャアー」となき目をパチパチさせる。
おまけに、耳までピクピクさせている。ネコでも人間の言葉がわかるのだと感心していると、
「これは動物ではありません。」とおっしゃる。
「え?どういうこと?」おもちゃなの?本当に?」とつい聞いてしまった。
どう見ても本物に見える。ネコの真っ白い毛の色があまりにもきれいすぎるか、と後から思った。きっと高い玩具、いや、ロボットに違いない、と思う。皆が珍しがって話しかけていた。
でも、次の日からその高価そうなロボットを見かけることはなかった。その人の部屋で時間が来るとなきその後目をパチパチさせているのかなあ。(E)
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