梅雨が明け、もやーっとした空が少しすっきりした頃、ようやく撮影のチャンスが訪れた。
夜屋根を開ける。頭の上をゆっくりと星空が広がってゆく。建物の外に出れば同じ空が見えるはずだが、観測デッキに居て屋根を開くと、まるで舞台の幕が上がるようなそんなワクワクがある。
街明かりから遠い東の空の、かなりの高みにこと座が見える。そうだ。最初のショットはドーナツ星雲にしよう。望遠鏡を向けてカメラのスイッチを入れる。ISO感度800、露出3分。続けて何枚か撮る。
メシエカタログ57番(M57)。「ドーナツ」のニックネームをもらったこの星雲は、歳取った星が最後に放ったガスの殻。ただ、焦点距離が短すぎて細かなところまで見えない。それに少し画像がおかしいような…
そうか、光軸がずれているのだ。あー、気付かなかった。調整しなければ。と、そうこうしているうちに月が昇ってしまった。