冬型の気圧配置が緩む気配は無い。しかし、せっかく月の出が遅くなった週末、竹取庵一階居間の煉瓦積みをひと段落させて二階の観測床に上がった。
屋根を開けると肌を刺す強風。いつもの20センチ反射望遠鏡から鏡の収差を打ち消すレンズをはずして、焦点距離を伸ばすレンズと取り替えた。天体が少し大きく写るはずだ。
カメラを取り付けて筒先を北に向ける。北斗の柄を尾に持つおおぐまが昇り始めていた。その首元に双眼鏡でも見える二つの銀河がある。葉巻銀河とも呼ばれる左側のM82は、渦巻銀河を真横から見たものだが、よく見ると複雑な形と色をしている。右側の大きな渦巻き星雲M81が接近したときに重力によって形が崩れ、新しい星が爆発的に生まれているのだそうだ。加害者のM81は澄ました顔で通り過ぎている。これは一種の人身事故。広いはずの宇宙でもこうしたアクシデントはよく起こる。
それはさて置き、収差を打ち消すためのレンズをはずすとこれほど周辺の星が細長く変形するのか。これでは使えない。それにいつも思うがこの望遠鏡は星が大きく写り過ぎる。改造しなければ。宇宙(そら)を撮影するのも簡単ではない。