この週末も天気は良かったが、土曜日の遠距離出張で溜まった疲れが翌日に響き、今日はみかんの丘にも行かず、だらだらと過ごしてしまった。日暮れになってようやく外に出て、見上げる西空に息を呑む。三日月と金星のランデブーだ。
あわてて家に取って返し、カメラと三脚を持ち出した。望遠鏡はほとんど竹取庵に置いている。手持ちと言えば口径60ミリのファミスコ60しかない。沈むなよ、沈むなよ、そう心の中で祈りながらカメラを繋いで三脚にセット。感度640露出1秒で雲に入る直前のこの光景を何とか切り取ることが出来た。
三日月と輝星はイスラームの象徴だ。満月に向けて膨らんでゆく三日月は発展と進歩を、また金星に代表される輝星は光と知性をそれぞれ表すという。イスラム国家の中にはこの二つの天体を構図に取り入れているところも多い。
発展と知性。世界を見渡したとき、この二つのバランスがきちんと取れている国がいったいいくつあるだろう。そう考えてしまう。
撮影のコントロールをコンピュータに任せて満天の星空を見上げた。天頂付近にもやもやとした光の塊がある。
かみのけ座。それは戦場から帰ったエジプト王プトレマイオス3世の無事を喜んだ王妃ベレニケが、女神アフロディーテに捧げた髪だと言う。写真に撮るとこんな風に一つ一つの星に分かれて見えるが、その淡い星たちが雲の様にまとまって、僕の目には綿菓子と映る。それに日本人の僕には髪は黒いものというイメージがあって髪の毛という呼び名自体しっくり来ない。
それはさて置き、西のしし座や東のうしかい、それに北のおおぐまがきちんとした星の連なりなのに対して、かみのけ座はほとんど形を成さない。それなのに、初夏の夜空で結構な存在感が有る。集団の力というものなのかも知れない。