宇宙(そら)に続く丘

プレリュード小学校1年C組のしりとりちーが案内する宇宙への道
みかんの丘は不思議へ通じるワームホール

詩人を救ったいるかのお話

2011年09月26日 00時48分44秒 | 

天の川に遊ぶ鳳の少し下、七夕で知られる彦星の近くに「いるか座」という小さな星座がある。写真に撮ると星に埋もれて分かりにくいが、実際の空では結構見つけやすい。6つの星の連なりが、水の上で跳ねるいるかの形をしていて本当に愛らしい。僕はこの星座が大好きだ。


いるかが星座になったいきさつには二つの説が有る。一つには、もともと大地の神だったポセイドンが、海も支配しようと、海神オケアノスの娘アンピトリーテに求婚した。目論見を見てとったアンピトリーテは遥か西の海にあるオケアノスの館に身を隠すが、その隠れ場所を1匹のいるかがポセイドンに教えたため、アンピトリーテは見つけ出されてポセイドンの妻となる。ポセイドンは願いどおり海を支配下に入れ、その功績でいるかは星座になったというのだ。これはひどすぎる。これではいるかはただのチクリ魔ではないか。

僕が好きなのはもう一つのお話。
詩人であり、琴弾きの名手でもあったアリオンがシチリア島の音楽会で優勝し、多額の賞金を手に船で故郷を目指していた。ところがこの賞金を我が物にしようと船乗りたちがアリオンを襲う。甲板に引き出されたアリオンは、最後の願いに琴を弾かせてくれと頼んだ。船乗りがこれを許し、アリオンが琴を弾き始めると、どこからともなくたくさんのいるかが船の周りに集まってきた。アリオンはそのいるかの群れに身を投げ、いるか達はアリオンを背に乗せて無事故郷に送り届けた。その功績によって天に上げられたというのだ。



いるか座のあたりを写真にとっても星雲や星団は見当たらない。ただ、天の川から打ち寄せられた星屑がまばらに写るだけだ。それでいい。無邪気ないるかはただ星屑の大海を跳ねて遊ぶだけ。きっと詩人アリオンを助けたこともとっくに忘れているに違いない。僕はその、天衣無縫の小さないるかの姿に強く惹かれてしまう。


コメント (1)
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