大きな雲がいくつも空を覆っていた。ああ、やっぱりそうか。今年はついていない。そう、今夜は皆既月食。それも欠け始めから食の終わりまでを完全に見ることのできる月食は11年ぶりだ。それだけに期待していたが、みかんの丘のポイント予報は今夜から朝方にかけて曇り。なんとなく気が乗らず、カメラを持って家を出たのは午後8時をかなり回っていた。
ところが丘に登ってみるとあれほどあった雲が消えている。あれ、見えるのかな。半信半疑で竹取庵の屋根を開ける。こんな風に撮ろうかあんな風に撮ろうか。迷っているうちに月の左下が翳ってきた。時計を見ると9時半を過ぎている。しまった、もっと早く家を出れば良かった。もう構図や技法を考えている余裕はない。とりあえず45センチかぐや姫に大きいほうのカメラを取り付けて撮影をスタート。
結局初めに考えていた目論見は潰えて、脚立に上って構えるカメラのモニターの中で、モノクロームの月がゆっくりと蝕まれていった。
(カメラ感度200 露出時間400分の1秒)
hajimeta