宇宙(そら)に続く丘

プレリュード小学校1年C組のしりとりちーが案内する宇宙への道
みかんの丘は不思議へ通じるワームホール

星空に浮かぶ巨大な10円玉

2011年12月12日 01時56分22秒 | 

寒い。とにかく寒い。竹取庵はスライディングルーフという、屋根がそっくり移動する形式の建物だ。完全に開いてしまうと観測デッキは吹き曝しとなる。欠け始めた月はほとんど真上だった。口径45センチF5.5というニュートン式の反射望遠鏡かぐや姫のカメラ位置はデッキの床から3メートル近く上になる。北風から身を守る術は無かった。観測デッキは土足では入れない。薄い靴下で上るアルミの脚立は、足の裏から容赦なく体温を奪ってゆく。凍える体で見上げる月は、初め左下から、やがて左上へと欠ける位置が移動していった。

 

自動追尾という便利な機能のない簡易経緯台のかぐや姫だ。月が真上になるほど扱いが難しくなる。脚立からテーブルへと足場を移しながら、望遠鏡の先端に取り付けたカメラのモニターで月を捜し、見つけてはフレームを合わせて撮影していった。
やがて…

午後11時5分。あれほど明るかった月は薄暗い赤銅色に身を染め、妙な立体感を持って空に浮かんでいた。月食は地球の影に月が入ってゆく現象だ。その地球には大気がある。太陽の光はこの大気によって青い色を奪われ、さらに大気の屈折で内側に曲げられて影の中まで赤い光が届く。だからそこに入ってゆく月は言わば夕焼け色に染まることになる。
巨大な赤い玉。望遠鏡や双眼鏡で眺めるとそうなるが、肉眼で見上げると、僕には星々の中に浮かぶ巨大な10円玉のように見える。ただ、その10円玉は、腕をいっぱいに伸ばして持った1円玉とほぼ同じ大きさだ。

不思議な光景。それは本当におとぎの国に出てくる夜空のようだった。

コメント (1)
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