金星とプレイアデスの会合を撮って振り向くと、東の空の雲間に月が昇っていた。十五夜が日没とともに昇って来るのに対して、月齢16の月は1時間余り遅れて昇る。その様を見て昔の人は、月がいざよいながら(ためらいながら)昇るのだと解釈した。
だから十六夜=いざよい。
良い言葉だと思う。どこからそんなセンスが産み出されるのだろうか。生まれて此の方空など見上げた事の無い現代人に爪の垢を煎じて飲ませたい。古代人のほうが明らかに文化レベルが高いではないか。
そうだ、夜桜。このチャンスを逃す手はない。枝垂れ桜越しに十六夜を撮るんだ。そう思ってカメラと三脚を持って外に出たが… 崖っぷちに植えてある桜と月の位置関係で三脚を立てる事が出来ない。やむなく崖に身を乗り出して手持ちで写す。
焦点距離55mm、カメラ感度800、露出50分の1、絞り32、内蔵フラッシュ強制発光。もう少し月を大きく撮りたかったが、持っていたレンズではこれが限界だった。もちろん画像処理はしていません。ふふふ、いい出来だ。カメラのモニターを見ながらひとり悦に入る。観測デッキに戻ったものの、明るくなった「照明」にほとんどの星が埋もれてしまっている。撮影はあきらめて丘を後にした。