雲の塊がいくつも丘の上を過ぎてゆく。その度ごとに靄は濃くなっていった。それでもと竹取庵の屋根を開ける。頭の上にはかろうじて星が見えるが、西に行くほど靄が厚く、まるでグラデーションだ。こんな空で撮れるかな。淡い星雲は無理だろう。アンドロメダ座のM31でも狙ってみよう。20センチ反射も考えたが、迫りくる雲と靄の合間を縫っての撮影だ。あれこれ調整している時間が無い。月食を撮った後そのままにしていた8センチ屈折に、大きいほうのカメラを取り付けて東の空を狙う。ファインダーを覗いたが、コントラストが悪くてよく判らない。感度を6400にアップして試し撮りをしてみた。露出18秒だ。
カメラのモニターに現れた星雲の中心が視野の中心から少し外れている。位置を修正して本撮影だ。感度を2000に落として赤道儀の準備を終え、再度ファインダーを覗いたが灰色の空しか見えない。見上げると望遠鏡の筒先あたりに幅の広い帯状の雲が横たわっていた。この雲の通過を待つうちに西から新しい雲が押し寄せてくる。とうとう空一面べた曇りになってしまった。だめだ、帰ろう。それでも少しは楽しめた。また今度。今度こそ良い空を。