春の妖精
2006-03-29 | 花
庄内にカタクリが咲き始めました。
落葉広葉樹林の林床に、雪解けを待ちかねたように一斉に芽吹き、頭上の樹々たちが葉を広げる五月には地上から姿を消してしまう早春の短命な植物たちをSpring Ephemeral(スプリングエフェメラル)~「春の儚い命」「春の妖精」と呼びます。雪国はこの早春植物の宝庫なのです。
「スプリングエフェメラル」、「春の妖精」、と呼ばれる植物は、ミスミソウ、セツブンソウ、キクザキイチゲ、イチリンソウ、ニリンソウ、ショウジョウバカマ、アマナ、エンゴグサ、オウレンなどですが、なんと言ってもその代表格はカタクリではないでしょうか。
恥ずかしそうにうつむきながら咲く可憐な花姿は、妖精が羽を広げて舞い降りてきたようにも見えます。その群生は冬枯れた早春の林床を一面紫色に染め上げ、それは見事です。
そのカタクリの花、実は8年かけてやっと花を咲かせるのだそうです。
早春の光を短い期間しか受けられないために、細い葉で一年また一年と毎年少しずつ養分を蓄え、ようやく一輪の花を咲かせるのです。
まるで、長い年月をかけて想いを育み、やっと夢を叶えるように咲く早春の小さな花。
雪国庄内にも春のやさしい風が吹き始め、
妖精たちのつかの間の夢が始まりました。
カタクリ―花咲く春の森で (著)太田威