(2023年1月6日)バンツー族の奇習lobolaは、嫁を得るために牛の幾頭かを相手家族に「贈る」慣習を指す。それなら日本でもかつて実施されていた、婿家族が用意し嫁家族に贈る「結納金」と差はない―との指摘を貰いそうだが、違いは大きい。いわゆる結納 « prestation » は「個から個へ」で終結する。貰った側はそれをいかに使おうと自由に処分できる。しかしloboloでは贈られた牛群れを部族の交換経路に還元しなければならない。具体的には「流用」。花嫁を出して牛を貰った兄、ときにはいとこが嫁を貰う原資にこれを用いる。牛群れを別の系統にわたす。
ここには2の « univoque » が認められる。嫁を貰った側は嫁を「原資」に次代再生産を図り、かつ現状の生活の質を高める、牛の頭数だって増えるだろう。もう一方の« univoque » がこの「流用」にある。それを財の巡回経路に乗せるのは、貰った側の義務である。自家消費してはならない。この2を併せて « bi-univoque » 相片務の交換とえる。
前回、妻側の落ち度で婚姻が継続不可となった場合、妻に去られた男は« grande moukonwana » 妻の実家に嫁いだ嫁、これをしてオオアネと訳したが、彼女を後釜に要求する。平常は話しかけることすら禁忌として遠ざけられるオオアネを、立場が替われば嫁に出せとせまる。
根拠は彼女が妻実家に居座るのは(嫁に逃げられた)婿の艱難辛苦のはてに贈った牛群れが原資だったから。ここで騒動が始まる。妻の実家側として新妻は再生産の要、取られたら次代の設計が不透明となる。駆け引きが始まり、妻側に代替品(妹か)が用意できればそこで落ち着くとか。
一の « équivoque » で破綻する。そして発端となった落ち度ある側が代償を支払う。相片務 « bi-univoque »は交換に参加している系統(家族)を保護する効用も併せ持つ。
ここで« équivoque » の訳をひねり出そう。語感として「偏務」が原義により近い、しかし片務と同音となってしまう。そこで「失務」を考えついた。
片務、さもなくば死―と曰うカミユ。写真はネットから。
まとめ;
Murungin族の婚姻形態は « univoque » 片務を強いる一般化交換
Bantou族は « bi-univoque » 相片務の一般化交換。巡回経路がより延伸している故の信用保証制度であろう。
2の系統の間で嫁のやり取りをする場合が « réciproque » 相互。
いずれの場合にも « équivoque » 失務の行為で破綻する。レヴィストロースの主張は片務が制度を保証する。 « L’équivoque est la mort » 失務は死だ!と見破ったカミユ、彼は作家ではない預言者なのだ。
Univoque余話 équivoque とは 了
ここには2の « univoque » が認められる。嫁を貰った側は嫁を「原資」に次代再生産を図り、かつ現状の生活の質を高める、牛の頭数だって増えるだろう。もう一方の« univoque » がこの「流用」にある。それを財の巡回経路に乗せるのは、貰った側の義務である。自家消費してはならない。この2を併せて « bi-univoque » 相片務の交換とえる。
前回、妻側の落ち度で婚姻が継続不可となった場合、妻に去られた男は« grande moukonwana » 妻の実家に嫁いだ嫁、これをしてオオアネと訳したが、彼女を後釜に要求する。平常は話しかけることすら禁忌として遠ざけられるオオアネを、立場が替われば嫁に出せとせまる。
根拠は彼女が妻実家に居座るのは(嫁に逃げられた)婿の艱難辛苦のはてに贈った牛群れが原資だったから。ここで騒動が始まる。妻の実家側として新妻は再生産の要、取られたら次代の設計が不透明となる。駆け引きが始まり、妻側に代替品(妹か)が用意できればそこで落ち着くとか。
一の « équivoque » で破綻する。そして発端となった落ち度ある側が代償を支払う。相片務 « bi-univoque »は交換に参加している系統(家族)を保護する効用も併せ持つ。
ここで« équivoque » の訳をひねり出そう。語感として「偏務」が原義により近い、しかし片務と同音となってしまう。そこで「失務」を考えついた。
片務、さもなくば死―と曰うカミユ。写真はネットから。
まとめ;
Murungin族の婚姻形態は « univoque » 片務を強いる一般化交換
Bantou族は « bi-univoque » 相片務の一般化交換。巡回経路がより延伸している故の信用保証制度であろう。
2の系統の間で嫁のやり取りをする場合が « réciproque » 相互。
いずれの場合にも « équivoque » 失務の行為で破綻する。レヴィストロースの主張は片務が制度を保証する。 « L’équivoque est la mort » 失務は死だ!と見破ったカミユ、彼は作家ではない預言者なのだ。
Univoque余話 équivoque とは 了