蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

詩を4編、矢車菊(やぐるまそう)への巡礼など

2008年11月04日 | 小説
4編とも長編です、全編をここに掲載できません。そのうち短めの「高橋クンからの小包」を下に。全4編を読みたい方はHP部族民通信へ(左のブックマークから入ってください)

高橋クンからの小包

ある日私は小包を受け取った
差出人がなかったので気になったが
開封したら友人の名前でメモが入っていた
しかし友人は二十年前に死んでいる。
悪質なイタズラと怒ったが内容が気になった。
高橋クンを騙ったメモはこんな話だった、
ある朝に身体がきしみ出す、肉が縮まり
骨は元の大きさのまま、肉と骨の軋轢で
関節が痛む。一気に耐えられない痛さに進行する
その痛みは五分後に訪れる死の前兆で
生きるか死かの間際には息をするのも耐えられない。
その痛みの頂点でうれしいことに息絶える。

そのことを思い出したのは
今朝目覚めたら関節のあちらこちらに
しぶしぶときしみ痛さを感じたからだ。

メモは確かこう続いた、
茨の棘を一針送る。棘を頭に刺し埋め、その痛さが憎しみに変わりそして骨の苦しみを祝福する。針先に塗り込められた草露の一滴が裏切り肉に毒を注ぐ。関節の痛みはやわらぎ、お前は安らかに死ねると。

俺にはもう五分しか残らないのか、
早速小包の茨の棘針を試す事にした。だが遅かった
私はもう床から起きあがれない。這いずりもできない
関節も骨も肉も締め上げられる痛さに悲鳴をあげる。

枕元の家人に伝えた、
高橋クンが五年前に送ってきた茨の棘が欲しいと
家人はそんな物はないと即答した
その横に座る私の知らない誰かに「とっくに死んでいる友人の名前まで出しているワッハッハ」と声かけた。
意識混濁が始まったのです。もう終わりですな、あと数分ですよと横からしたり声が聞こえた。皆が生き生きとはしゃいでいるようだ。

あの高橋クンが死んでから送ってきた茨の棘だよ。注射針みたいに先が光っている棘。それを頭頂に差し込むと体中のきしみが消える。試したいのだ。体中が痛い、お願いだ。高橋クンからの茨の棘を出してくれ。

家人は私の手を揺すったり背中をさすったりした。そんな事するなよ、余計に痛いじゃないか。早くタカハシクンだよ、

しっかりしてお父さん、高橋さんは二十年前に死んでいるのよ。手紙が来るわけ無いのよ。
痛いとか聞こえたけどまだ諦めないで。頑張れば山を越せると横でセンセイが励ましてくれている。痛みを我慢するのよ。我慢するのよ。 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 鬼灯を遠くに投げての4をUpload | トップ | 鬼灯を遠くに投げての五回目... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

小説」カテゴリの最新記事