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蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

神話学裸の男フィナーレ終楽章について 4

2020年05月18日 | 小説
(2020年5月18日)
フィナーレ最終楽章の3の投稿は5月8日、この間に「親族の基本構造」を取り上げ、10日ぶりの復帰となります。新大陸神話の北上説の紹介を数回に渡り。


「新大陸神話の北上」説について
レヴィストロースが第3巻「食事作法の起源」で提案した説です。部族民サイトWWW.tribesman.asia 2019年の頁に移り11月30日掲載の「裸の男l’hommenu神話学第4巻を読む」に接近できます。あるいはサイト内のGoogle検索機能を用い「神話北上」を検索すれば数頁がヒットします。
11月の掲載では「どの様な伝播メカニズム」を経緯したのかを取り上げています。マトグロッソから北アメリカへの伝播。その遠距離伝播のエンジンなど。
ホームサイトへ訪問できない(時間的に)方には以下のまとめを;

1 比較的伝播距離の短い例、南米アマゾニアとされる水域のTucana族アマゾン上流とArawak族同下流では伝達的な伝播は予想される。しかし南米から北米への移動において伝達では心許ない。「伝言ゲーム」では数人のリレーを経て各チームがバリアント(変異)を形成してしまう。
2 遠距離を旅しても基本の変容が見られない理由として神話のschemeをsyncronie とdiachronieに分解し、syncroniqueは定性(因果)、diachroniqueは時性(因果)とする。この横縦の因果関係を神話同士で共有すれば、いくらかの変異(特に縦方向、時性)が検知されるが、varianteの範囲である。神話これは部族民蕃神の発明などではなくレヴィストロースの思考(Finale566頁、langue, paroleの機能分担を定性と時性とに分けて伝播の源泉とした)をモトにしている。基づいてPDF(Bororo・Klamath族神話比較の試み)を作製した。

マトグロッソ、アマゾニア、カリブ海を経て北米に伝播したと推察するがカリブ海、ミシシッピ域の神話は今もって採取されていない。

各論から総論に入る。

1 南北大陸の神話叢は似通う。似ているとは筋立て(armature)と伝達内容(schemeスキーム)において同一(identique)、時には逆立(inverse)の関係が認められるから。これを突き詰めると神話学全4巻に収録された総数813の神話は全て、基準神話M1(ブラジル・マトグロッソに居住する(していた)ボロロ族の「鳥の巣あらし」神話)との直接、間接に関連があるとの主張につながる。
2 北上説の間接ながらの証明とは、神話の「筋の流れにおいて」南北の差違が顕著であるものの、伝達内容は大いに近似すると認められるから。
北米神話の構成は複雑かつ精緻、登場者の数も多い。筋の「複雑化」は同様の事象を繰り返すからである。例として近親姦を挙げるとM1神話では一回で天地創造に至るが北米神話(イシスの冒険譚)では数次にかさなる(PDFを作製、イシスの冒険に読む罪と罰の第3頁、2019年11月15日掲載、サイト内Google検索で頁とPDFに接近できる)。遠方に伝播するほどこうした事象はかさなるから、複雑の度合いは増える。第3巻の「神話から物語りへ」(2019年10月31日掲載、Index頁から2019年頁に移る、ないしサイト内検索で訪問)でレヴィストロースはこの仕組みを「神話の新聞連載小説化」と明かしている。

3 北上説への批判は「そもそも南北大陸先住民はベーリング海峡を渡って南下分布した歴史事実があるのだから、似通いは当然。民族の流れ(北から南)に沿って神話も伝播したとする考え方は無理がない」(アメリカの人類学会おおかたの意見)。これに対してレヴィストロースは「似通いを論じているのではない、差違が大事なのだ」と一蹴する。

何故に差違が重要かと言えば、もし民族移動と神話の流れが平行するなら差違(逆立)は少ないはずだ。しかしそれぞれの地域での基準神話が総体の基準神話(M1)と少なからず差違を見せる。その事実は民族移動と神話伝播の方向が逆である証左である。歴史神話学(フィンランド学派)は同一性を探した。これとは逆の指向である。

1の似通い、同一と逆立について。
>On est alle dans le troisième volume de l’Amerique du sud a l’Amerique du nord , grâce a des mythes inverses dont la signification était identique
訳;第3巻において南アメリカから北アメリカに舞台を写す事ができたのは、 (基準神話)と比べ意味するところは同一ながら(形態)は逆立している幾つかの神話のおかげである。
続いて;
>Dans le quatrième volume, on revenu d’Amerique du nord en Amérique du sud grâce a des mythes identiques (M529-531 reproduisent M1,M7-12) dont la signification était inversee<
訳;第4巻では北アメリカ神話を取り上げ、南アメリカにも回帰できた。その理由は神話そのものが同型ながら意味するところが逆立している幾つかの(M529-531)神話を認められたからだ。

神話(そのもの)とその意味(signification)が同一と逆立の関係を見せている。これは何を語るのであろうか。この分析を始めるに神話番号が記載されている後者から始めよう。すなわち
神話(そのもの)は両者(M1 bororo族神話)と(M529 Klamath族)は同一
それらの意味が逆立

M529(イシスの冒険神話)はホームサイトで紹介されている(裸の男神話学第4巻を読む2、2019年11月15日掲載)。引用する。

>嫁ぎ先に戻る姉に弟が供をすることになった。太陽は中空にかかる、今出立して夕前には到着する行程であるから、母は同行を許した。しかし何故か日がとても早く暮れてしまった(別バージョンでは太陽に早く沈めと姉が脅す)。野の窪みに二人は宿る。寝入った弟の脇に姉が滑り込む。<La femme vint se glisser pres de son frere endormi. Il s’eveilla et fut choque de la trouver contre lui ((Quleelfole ! Vouloir devenir l’epouse de son propre frere !))>
<女は身をすべらし弟は目覚めた。姉を己の上に見て、ただならぬ衝撃を受けた。なんと愚かな行い、血を分けた汝の弟の妻になろうとはと非難した。姉は寝入り、太い幹を身代わりに置き弟は逃げ出した。村に戻るやつぶさに出来事を語る息子、その一部始終を聞く母は大惨事を予兆しおののく。姉の目覚めは昼下がりとなった(早く隠れろと命じた分、翌日にも太陽周期は速まっていた。太陽周期律を乱した罪のしっぺ返し)。
その後:姉は猛り狂い火をに落とし、部族民を皆殺しにして、己はアヒ(水鳥、奇怪な声で鳴く)に変身する。生き残った兄妹は夫婦の契りを結び世界創造の英雄イシスをもうける。

鳥の巣あらし。挿絵は神話学第2巻「蜜から灰へ」から転写。

M1神話を紹介する。通過儀礼(成人になる)を直前に控えた若者(バイトゴゴ)が母を犯す。バイトゴゴの腰ひも飾り(個人を特定できる)をみよがしに母が身につける。父はバイトゴゴに試練(通過儀礼)を与え、最後に巨木(断崖)に置き去りにされる。ジャガーに救われ、火と狩猟用具を盗んで村に戻る。(ホームサイト2019年頁、神話学第一巻生と調理、その3、6月30日掲載)
M529神話とM1神話は「神話そのもの」で同一、「意味」で逆立するのであると尊師が曰う。
神話、意味、同一、逆立の意味を正しく定めないと理解につながらない。 続く

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